登ると痛いとげのある木によじ上って得意になっているなんて、
なんて馬鹿な奴なのだろうか。
しかし、その馬鹿な奴が自分なのだから困る。
不思議なことに生まれた実家より
そこから少しばかり離れたとげの木のある丘の上と
そこに至る道を心地よく思い出す。
なぜなのだろうと不思議に思いながら
実はこれまでその答えが見つからないまま
過ごしてきた。
とげのある木のそばでたしか
親と一緒に昼食を取ったような気がする。
その昼食が終わるととげのある木に登り
誰かの前で得意になっていた自分がいた。
その丘を下った谷には杉の木が植えてあった。
谷に流れる川は小さく冷たく
杉の木が光を遮り陰をつくり
流れて乱れる水がときどき日の光を跳ね返していた。
その谷に植えた杉の木の枝を払いながら
父親はこの杉の木が大きくなる頃には
編者の弟の家が必要になるだろうし、
この杉の木をしっかりした柱にするには
こうやって枝を払う必要があると話していた。
その頃小さすぎた弟はこの話を覚えてもいないし、
今ではせっかくの杉の木も要らないコンクリートの家に住んでいる。
とげのある木の植えてある丘の上を
不思議に懐かしく思うのは
もう一つの大事なことを忘れているような気がしながら
まだ思い出せずにいるせいかもしれない。
-2001/10/29
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