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飛行機はなぜ頑張って飛ぶのか?


 小さなプロペラ機はお世辞にも乗り心地が良いとは言えない。やたらに振動がひどくて飛行中はもちろん着陸のために高度を落とすときもよく揺れる。しかもなかなか着陸してくれない。

 オマケに気圧の変化で耳まで痛くなる。不思議に高度があがるときより、高度が下がるに従い耳が痛くなる。体内の圧力と外気圧の差を縮めるために、鼻をつまんで口を閉じ耳から息をはき出すようにして肺に力を入れたりする。

 そうやって何度となく乗ったプロペラ機は、YS-11と呼ばれる国産旅客機で今でも飛んでいるらしいがコストパフォーマンスが悪い上にメーカーは大赤字だったそうで、国内航空会社からもそっぽを向かれて注文もこなくなり国産旅客機の火は消えている。


 その日はそんなYS−11に乗り、縦に長い円形の窓から外を眺めていた。席はちょうどプロペラがよく見える位置にあり、プロペラは回転数を上げ、機体は滑走路に向かっていた。

 飛行機に関わる仕事はパイロットとかスチュワーデスとか、空港のチケットカウンターや荷物検査の職員だけではなく、滑走路に出て飛び立つ飛行機のすぐ傍で働いている人たちもいる。

 飛行機が滑走路に入ってくると、彼らおよび彼女たちは白線が引かれた滑走路の端で一列に並び、飛行機に向かって次々に敬礼する。

 孔子の教えによると、敬意はそれを内に抱いているだけでは不十分で、見える形で外に出さねばならないものらしい。

 一対一で対峙(たいじ)するとき、敬意を見える形で表現するのが礼だとすると、彼らは誰に対して敬礼しているのか。

 彼らに見送られながら滑走路に入った飛行機はプロペラの回転数が増すにつれ振動数も増し、一所懸命滑走路を走り抜けようとする。もうこれ以上回転数を上げられないというくらいに振動と騒音が頂点に達したとき、機首は上に傾き機体は陸から離れる。

 この姿を外からみると、いかにも頑張って飛んでいるように見える。飛ぶはずがないと思わせる金属の塊が、地球の引力に逆らって上空を目指す。

 ぶるぶるとやかましく震えながら突っ走る格好悪さが、宙に浮いた瞬間、震えがくるくらいにかっこよく見える。敬礼でもしたくなる瞬間だ。

-2004/2/27-28





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