ポケットから取り出した自分より大きいドアを開ければその先は行きたいところ。こんな願望を叶えてくれるのがどこでもドアですが、ドラえもんの中に登場するこの便利な道具は、実現できるのでしょうか?
どこでもドアは、たとえば人間を遠くへ瞬時に運んでくれる道具です。実際に実現したとすると、もう少し大きな装置になるのかも知れません。冷蔵庫を大きくしたような装置があって、まずはその装置についたドアを開けて中に入ります。すると、上下左右から光が飛び出し分析が始まります。ここで中に入った人の情報を集めるわけです。分析が終わると、つぎはその莫大な情報を超高速回線で指定した移動先に送ります。
移動先にも同じような大きさの装置があって、その中では送られてきた情報に従って物質から細胞がつくられさらにそれを集めて人間の体が再生されます。人間の体は60兆個の細胞からできているそうですから、かなり高速な処理が必要になるはずです。それでも、スーパーコンピューターを使えば処理もあっと言う間です。こうやって、入り口に入った人が、離れたところに現れる、と言った離れ業が可能になるはずです。
装置の横には細胞をつくるときに必要な元の物質が入ったタンクが並んでいて、まるでプラモデルを分解してもう一度組み立てるような作業を離れたところでやるわけです。「その人らしさ」を作っているのは、その人特有の環境や経験によって得られた記憶そのものですから、脳の中は特に正確に再現する必要がありますが、科学がさらに進めば不可能ではないはずです。
しかし、こうしたテレポーテーションは、どんなに科学が進歩しても実現しないかも知れません。
入り口の装置で人の情報を分析し転送し、さらに、その情報を元に転送先で再構成することは可能になるはずです。どんなに細胞の数が多くても、いずれスピードと精度が追いつき、実現に近づくはずだからです。
しかし、越えがたい壁が一つ存在します。それは消去ボタンを押すことです。転送先に自分のコピーができたら、今ここにいる自分が不要になるため、消去しなければなりません。そうしなけば、自分が二人になってしまうからです。
ファイルの移動が、移動先にコピーを作った後、元のファイルを消去することで実現されているように、生きている生の人間である自分を消去しなければ移動にはなりません。”移動先には自分ができあがっているはず”、そう信じて消去ボタンを押し、ここにいる自分を消去せねばならないのです。
移動先にいるのは本当に自分なのか、もしそれが真実ならここにいる自分は誰なんだ、かくして誰もボタンを押そうとしないため、いつまでたっても、『どこでもドア』は実現しないのです。
-2004/6/17
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