ロケットの打ち上げと言えば旧ソ連とアメリカの打ち上げ競争を思い出します。社会主義国の代表であった旧ソ連と自由主義国の代表であったアメリカは自国の力を誇示することに力を注いでいました。なぜ誇示するのかと言えば、力が有ることを相手に示して、相手が攻め込もうとする気力を無くすためです。戦いは戦闘を交えずして欲しい物を手に入れるのが最善の策です。
13世紀にチンギス・ハンが建設したと言われるモンゴル帝国は支配地域を拡大しました。中国の東北部から南ロシアを支配し、そこで使うこととなった紙幣の価値を示すために大量の銀を確保する必要に迫られ、日本には銀がたくさんあるという誤った情報によって”元寇の乱”が起きたとされています。このチンギス・ハンも自らの力を相手に示して、闘わずして領地を拡大していったようです。日本に対しては失敗しました。
ロケットや宇宙開発が旧ソ連やアメリカのものだとばかり思っていた編者が意外なことに気づいたのは衛星通信の設備がフランスに有ることを知ったときでした。そこで、なぜフランスはそうした施設を持っているのかとその事情に詳しい人に聞いたことがあります。その人は「国としてのプライドだろう」と話していました。
ロケット打ち上げに必要な技術は兵器としてのミサイル開発のための技術に酷似しています。人工衛星を地上から3万6千キロ・メートル上空の軌道までもってゆく技術力が有れば、おそらく近隣諸国に到達するミサイルを開発する能力を持っていることにもなり、すでに純国産技術で打ち上げに成功しいる日本は世界中にたいして静かにその国力を誇示していることになります。
平和憲法を持つ日本はミサイルを開発してはいないと思いますが、平和利用という宇宙開発で技術を身につけてしまったことも確かです。日本がロケットを打ち上げるたびに北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)は北朝鮮を攻撃するためにロケット(ミサイル)の実験を行ったという声明を発表するのもこういう視点から考えると、その表明はストレートだと思えます。
しかし、もちろんこれまでも、そしてこれから打ち上げようとしているH2Aロケットも北朝鮮を攻撃するためではありません。宇宙開発事業団のホーム・ページの打ち上げスケジュールからロケット打ち上げの意味を考えてみることにします。
今年の2月3日に予定されているのはH−UAロケット試験機2号機で鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられます。そのロケットには以下のような目的があるようです。
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民生部品・コンポーネント実証衛星(MDS-1)
昨年(2001年)8月29日に打ち上げられたH−UAロケット試験機1号機は見事に成功しました。それまでに失敗を繰り返したとは言え、日本がロケットを打ち上げる技術を持っていることを世界に示したわけですが、問題なのはお金がかかりすぎることです。そこで安く作ってロケットビジネスに参入し、世界中から衛星打ち上げの注文をとろうと機会を狙っているのですが、衛星打ち上げにお金がかかりすぎると誰も利用してくれません。
日本女性の手先の器用さは有名ですが、男達だって熟練した技術を持っていて、目立たないところで世界に誇る製品を作り続けています。しかもそこで創り出された製品はあまりにも日常的過ぎる家電製品などの工業製品で活かされていながら、軍事用の部品より精度が高かったりします。
しかし、そこで使われる部品がたまに故障しても「しょうがないな」ですまされますが、軍事や宇宙で利用される部品の場合はそうもいきません。部品のばらつきで精度が落ちれば、狙った標的からずれて関係の無い市民が犠牲になることもあります。100億円くらいかかると言われる打ち上げが失敗してしまうこともあり得ます。
そこで、使われる部品は通常の民生用の部品と軍事用・宇宙用とは区別され、非常に高い信頼性が要求されます。そしてその価格はもちろん高価です。H−Uロケットに続くH−UAロケットがコストを下げることが主な目的であることを考えると、安価で手に入る民生用の部品を宇宙放射線が飛び交う宇宙で使い物になるかどうか実験することが必要になります。
その部品には地上用太陽電池、半導体、MPU、半導体レコーダー、CPV型バッテリーなどが含まれているようです。
ところで宇宙開発事業団は文部科学省、総務省、国土交通省所管の特殊法人なので、小泉政権が進めている特殊法人改革の中にも含まれています。宇宙開発事業団は将来的には運用の主体を民間に移す予定になっています。つまり、現在の規模を確保しようとすれば、衛星ビジネスにも参入せざるを得ない状況にあると言えます。
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性能確認用ペイロード(VEP-3)
ペイロード【payload】はもともと乗客や貨物などの有料荷重のことで、ここではロケット自体の重量を除いた、乗員や衛星の重量を意味することになります。H−UAロケットの場合は静止軌道の高度(3万6千キロ・メートル)まで何トンの衛星を運べるのかという、ロケットの性能を示すことになります。
ここで言うペイロード(VEP−3)はロケットの先端近くに設置され、温度や加速度や振動などを計測するためのセンサーを積んだ装置のことを示すようです。どれだけ重い衛星を積めるのかということはどれだけのビジネスになるかということでもあり、それをよく調べてみようということなのでしょうか?
- 高速再突入実験機(DASH)
再突入、つまり打ち上げるだけではなく、将来、月や惑星等からのサンプルを持ち帰るときに必要なデータを取るための実験機ということになります。宇宙開発事業団(NASDA)のHPの説明では静止衛星軌道上で地球を7周したあと、大気圏に再突入、データを収集しながら降下し、最後は落下傘が開いてモーリタニア国の砂漠地帯に落下する予定だそうです。
このモーリタニア【Mauritania】という国の正式名称はモーリタニア・イスラム共和国。アフリカ西部、サハラ砂漠の西にある国で、日本には軟体動物、つまりイカやタコを輸出しているようです。
いろいろ調べてゆくうちに結論を書きにくくなってきました。ロケットの打ち上げは大きな花火を打ち上げるようなものだと言う人もいます。一発100億円。しかし、国民一人当たり100円未満。「花火だけで終わりさえしなければ、打ち上げる価値がある」というのが結論です。
-2002/1/27
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