中国では電話網が整備されていないために、設備投資が比較的少ない携帯電話の方が普及していると聞いています。市街に溢れる電柱が電話の信号と同時に電力をも運んでいるように、美観を大事にする人にとっては野暮な存在である電柱も、その国のインフラを示す象徴的な存在であるとも言えます。世界中にはその目障りな電柱さえもなく、電気も通じないところが多く存在します。
そんな電柱が似合わない南の島で、太陽光発電システムを貸し出す業者の活躍を伝えるニュースがありました。日本ほど電気製品があるわけではないので、それほど大げさなシステムではありません。昼間に豊かな太陽の光を受け太陽電池で発電した電気を自動車用のバッテリーに充電し、夜になってテレビやラジオ、そして照明に使おうというものです。
そのささやかなシステムでも、買い上げるとなると金額がバカにならないため買えない人も多く、何とか買えても使い古しのバッテリーの処理にも困ります。それならレンタルにして月々払える金額にして普及させ、使い古しのバッテリーは引き取ろうと考えた業者のアイデアは島民に感謝されることになりました。
かつてニューヨーク大停電がベビーブームを巻き起こしたように、電気が通じなければ夜の娯楽は著しく制限され、いきおい男女の交わる回数が増え、最貧国では貧乏で子沢山という悪循環を繰り返します。
飢餓を無くすためには子作り以外の娯楽を用意する必要があり、そのために一番有効なインフラ(社会基盤)は電気です。ラジオがあっても電池を買う金がなければ、電池が切れて好きな音楽を聞くこともできません。太陽光発電システムは、電話における携帯やPHSのように、社会基盤が揃っていない地域にでも爆発的に普及して娯楽を与える”ホットスポット”的潜在力を持っていると言えます。
世界中のいたるところで普及するためにはそのシステムや構成される部品は安くなければなりません。そのためには途上国で普及する前に、先進国で使い古され、それを実現するための技術が枯れている必要があります。
電気さえ通じないために子沢山で貧乏が続く最貧国と、かつて”Japan as No.1”と称されながらも、娯楽が多すぎるためか少子化の進む日本の共通の悩みは”資源がない”という事実です。
両者を救う共通の技術は豊富でありながら使われずに棄てられている太陽エネルギーの利用技術です。しかも太陽光発電は日本が得意とする分野でもあります。なぜこの太陽光発電に潜在力があるのかについての基本を考えてみることにします。
<夏の甲子園のエネルギー的パラドックス>
電力需要のピークは暑い夏の昼間のしかも甲子園で繰り広げられる高校野球の決勝戦だと言われます。その時間にはテレビをつけ、エアコンも利用するからです。電力各社はこのピークに合わせ、隣の電力会社から余った電力を譲ってもらったり、それでも足りなければ使っていない火力発電所を動かしたりします。
これほど電力需要に神経質になるのは、一度電力が足りなくなると、100ボルトであるはずの電圧が下がってしまい、その下がってしまった電圧の分を補おうとして電流が増え、ますます電圧が下がってしまうという、銀行における取り付け騒ぎのような現象がおこります。
結果としてもたらされるのは停電です。コンピューターがあらゆる場面で利用されるようになった社会で起こる予期せぬ停電がどんな悲劇をもたらすかは経験している人も多いと思います。
<余っているのに足りないエネルギー>
光や熱エネルギーに満ちた夏という季節に、電気エネルギー不足が問題になるのは考えてみればおかしな話です。なにしろ夏と言えば、太陽から降り注ぐエネルギーをイヤと言うほど受け取ってしまう季節だからです。なぜこのエネルギー過剰の季節にエネルギー不足が起こってしまうかと言えば、それはもちろん存在するエネルギーの種類が違うからです。
欲しいのは暑さを防いでくれるエアコンを動かすための電気エネルギーであって、不快感をもたらし体温を上げてしまう熱エネルギーではありません。しかし、どちらも同じエネルギー、この捨て去りたい莫大な熱エネルギーを安価に電気エネルギーに変換することができれば、その人は巨万の富を手に入れることができるばかりではなく、世界中の貧困を救うことさえできます。
日本では、国からの援助がなくとも自宅の屋根に太陽光発電システムを取入れる人々が増えているようです。これは太陽エネルギー利用が環境に優しいからという”上半身”の欲求からだけではなく、長い目で見れば得だという”下半身”の経済的観念をも満足できるぐらいに技術が発達し、法整備が整ってきたという背景があるようです。
暑い夏にエアコンをガンガン使っても電気代が気にならないどころか、世界中の貧困を救うことにもなるという太陽光発電システムは黙っていても普及するものと思いますが、一言語らせていただきました。
-2002/6/23
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