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メモリーカードのスピード競争

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 「メモリーを増設すれば速くなる」と、繰り返し聞かされているせいか、”メモリー”と名のつくものなら”当然ハードディスクよりは速いだろう”と考えてしまいます。ところが残念ながら、少なくともこれまでのメモリーカードに関する限り、この”期待”は間違いで、「ハードディスクより遅い」というのが実態のようです。

 DRAMやSRAMなどのメモリーはハードディスクより高速ですが電源を切れば、まるでガソリンのように蒸発して消えてしまう”揮発性”のメモリーです。メモリーカードで使われているフラッシュメモリーは電源を切っても内容が消えない”不揮発性”という長所を持っていますが、そのしくみゆえに書き込み速度はハードディスより遅くなっていました。

 デジカメの画素数が増えてくると、メモリーカードへの書き込時間が問題になってきて、何枚も撮り続けているとやがて追いつかなくなってシャッターチャンスを逃がすことになります。いくらキャッシュ用のDRAMがあっても、メモリーカードのスピードが上がらないことには根本的な解決にはなりません。

 同じように速い書き込み速度が要求されるのは動画撮影や音楽データをリアルタイムで記録する場合です。最近発表されるメモリーカードは高速になった書き込み速度が誇らしげに強調されるようになってきました。”遅い”という汚名は払拭(ふっしょく)されつつあるようです。今回はこのへんの事情について調べてみることにしました。


<発表されている主なメモリーカード>
タイプ 容量 発売 速度 発売元
1. SDカード 512MB 2002/7/20 10MB/秒 ハギワラ・シスコム 転送速度
2. CFカード 512MB 2002/10/末 3.6MB/秒 レキサー・メディア 最低速度(24倍から推定)
3. xDピクチャー 128MB 2002/9/6 3.0MB/秒 オリンパス 書き込み速度
4. マイクロドライブ 1GB 2000/6/21 2.5MB/秒 IBM 最低連続読み出し速度
5. CFカード 512MB 2002/10月 1.023MB/秒 メルコ 書き込み速度、受注生産


<必要となる速度:動画>
 640x480(VGA)サイズで一秒間に30枚の動画撮影が可能な三洋のデジカメDSC-MZ3ではこのモードで使用できるメディアをマイクロドライブに限定しています。1ギガ・バイトのマイクロドライブで約12分間の動画を記録できるところから、一秒間に約1.4メガバイトものメモリーを消費していることが分かります。

 これは一秒間に1.4MB以上の転送ができるメディアでなければ連続して動画撮影はできないということを意味しています。これはかなりのスピードで、三洋電機がこれまで推奨していたハギワラシスコムのZシリーズ(コンパクトフラッシュ)でさえスピードが追いつかなくなっているようです。


<必要となる速度:静止画>
 500万画素を誇るニコンのクールピックス5700で2560x1920ピクセル、”HI”モードで撮ると32MBのメディアを使っても2枚しか撮れないとあります。仮にこのときに必要なファイルサイズを15MBとすると、この書き込みを一秒で終わらせ次の撮影を始めるためには15MB/秒の転送速度が必要になります。これは先ほどの動画の10倍以上のスピードで、1.5MB/秒の転送速度では10秒間待たされることになります。


<必要となる速度:音声>
 16ビットPCMステレオの音声信号をリアルタイムでメモリーカードに書き込もうとすると、古いカードでは途中で録音できなくなることがしばしば起こります。必要なデータ転送速度は約1.5Mbit/秒で、バイトに変換すると、200KB/秒程度です。ところが、これまではこのスピードでさえ満足できないカードが多く存在していました。


<ハードディスクの置き換えを狙ったスマートメディア>
 1989年、NAND型フラッシュメモリーを発明した東芝は1995年5月にメモリーカードセットを発表しています。このセットはノートPCなどに使われているPCカードタイプの親カードと、その親カードに挿入する子カード(SSFDC)からなっています。ハードディスクの置き換を狙ったこともあり、メモリーをハードディスクに見せるためのコントローラは親カードに入れ、子カードはメモリーセルだけにして値段を下げています。

 標準書き込み速度は300μ秒でフロッピーディスクの約10倍。将来的にはデジカメや携帯電話で使われることもあるだろうと予測していたことが当時のプレスリリースから読みとれます。

 この子カードは翌年にはデジカメ用のメモリーカードとして提案され、今で言うスマートメディアという別名を持つに至りました。スマートメディアにはコントローラが内蔵されていないため、デジカメ側にコントローラを持つ必要があります。大容量化と共に改良が続くメモリーに合わせてコントローラも変更が必要で、デジカメメーカーは大変だったようです。


<PCカードを小さくしたコンパクトフラッシュカード>
 1995年PC−ATA機能をそのままにして小さくしたコンパクトフラッシュカードが生まれます。機能はそのままなので、PCカードに挿すときに必要となるアダプタは線をつなぎ替えるためのコネクタが主な中身でアダプタそのものは安価です。一方スマートメディア用のPCカードアダプタにはコントローラが必要なためその分高価になります。


<音楽プレーヤ用途を狙ったMMC・メモリースティック・SDカード>
 MP3プレーヤー用途に、コントローラを内蔵、丈夫で小さいマルチメディアカードが発表されました。一方ソニーはウォークマンの置き換えを狙って独自規格のメモリースティックを発表します。しかも中身はMP3ではなくMDLPに使われているアトラックです。一方MMCでは著作権保護が不十分だというのでSDカードが生まれたり、メモリースティックでは大きすぎるというのでメモリースティックDuoも生まれました。

 ところが、著作権保護を訴える音楽業界等に気を遣いすぎたためか、音楽プレーヤー用途としては消費者からそっぽを向かれてしまい、20GBもの大容量ハードディスクを搭載したアップル社のipoDという名のトンビに油揚げをさらわれてしまっているようです。


<ハードディスクに戻ったIBM>
 IBMは1991年に従来のハードディスクの置き換えを狙い、東芝とソリッドステートディスクの共同開発を進めていました。しかし1998年9月小型ハードディスクを発表し翌年6月には販売を開始します。IBM藤沢事業所が開発を進めていた驚異の小型ハードディスクドライブ、マイクロドライブです。

 500円玉と同じくらいの大きさの磁気を帯びた硬い円盤がコンパクトフラッシュよりちょっと厚い箱(タイプU)のなかで回ります。回転数は一分間に4500回(340MBタイプ)。内側ではディスクと磁気ヘッドの相対的な速度が下がるため転送速度も下がりますが、それでもメディア転送速度は30.1メガビット/秒(340MBタイプ)を誇ります。


<データ記憶のしくみ>
 それにしてもメモリーにはどうやってデータを記録しているのでしょうか?それはズバリ、”電子”を入れる入れ物を用意し、そのなかに電子が入っているかどうかを調べ”0”か”1”かを読み取っています。かつては世界中の8割を日本が供給していたとされるDRAM(でぃーらむ)は電子をコンデンサーという入れ物に蓄えています。ところが、この入れ物がザルで、油断をするとあっという間に空っぽになってしまいます。

 そこで無くなる前に補充するという”自転車操業的作業”が必要になります。これを”リフレッシュ”と呼び、このあくせくと働く様を”ダイナミック”と称し、それゆえに”ダイナミック”なRAMという名前がついたとか(?)

 フラッシュメモリーも同じように”電子”を蓄えていますが、今度は漏れないように絶縁体で閉じこめています。このために何十年もデータが漏れないというわけですが、逆に書き換えたり消したりする場合は大変で、時間がかかったり、回数が限られたりするようです。

 書き換えは内部でつくられた20ボルト程度の高い電圧を加え、電荷が絶縁体を通り抜けて移動することによって行っているそうです。


<なぜ書き込みに時間がかかるのか?>
 フラッシュメモリーの書き込みのしくみを調べてゆくうちに、どうも黒板に似ていると思いました。黒地に白い字は書けるのですが、黒いチョークが無いために、新たに書き込もうとすると黒板消しで消さなければなりません。黒板消しの大きさで消される部分はブロックと呼ばれ、32キロバイトくらいです。この黒板消しに時間がかかります。しかも、回数に限りがあります。おなじブロックを繰り返し使っているとそこはやがて使えなくなります。これがフラッシュメモリーの寿命を決めてしまうようです。


<スピードアップの試み>
 どうしたらこの黒板により速く書き込むことができるでしょうか?フラッシュメモリーのメーカーはページ単位(512バイトくらい)で一度に書き込むなどの工夫がされてきて、最近発表されている1Gビットのフラッシュメモリーは10MB/秒の転送速度を誇るようになってきました。

 メモリーカードによって、このチップを搭載できる個数が異なります。8個を搭載可能なコンパクトフラッシュなら1Gビットのチップを8個使って1Gバイトの容量になります。コンパクトフラッシュはチップ以外に搭載するコントローラにノウハウがあり、スピードや寿命が違ってきます。

 10MB/秒の転送速度を誇る最新のSDカードをコンパクトフラッシュ型のアダプタに入れると高速コンパクトフラッシュになるということで、松下電池からアダプタも販売されるようです。


<業界再編のスピードと転送スピードの関係>
 コンピュータの世界は3年経つと容量が4倍になるという、ムーアの法則がよく語られます。フラッシュメモリーの世界は3年なら8倍、1年なら2倍と言えるようです。

 下の表のマイクロドライブの行をみると分かると思いますが、今年の始めには2GB品が出てもおかしくないところです。登場しない理由は社外の人は知り得ないIBMの”社内事情”だとか。IBMのストレージ部門は日立との合弁会社に統合されるそうですが、マイクロドライブも再編の波に飲み込まれているのでしょうか?

 すでに東芝とSanDiskはフラッシュメモリの別会社をスタートさせ、日立は三菱と一緒になってフラッシュメモリーを開発するそうです。

 業界の再編も転送速度アップに負けないくらい動きが激しいようです。

-2002/10/22


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■データ

<各メディアの最近の動きと予測>
タイプ サイズ チップ 1999 2000 2001 2002 2003 2004
1990 PC memory card
1992 PC-ATA 32 (1GB) (2GB) (4GB) (8GB) (16GB) (32GB)
1995 SmartMedia 45x37x0.76 32MB 128MB - - -
1998 MMC 2 16MB 64MB
1995 CompactFlash 42.8x36.4x3.3 8 160MB 512MB 1GB (2GB) (4GB)
1998 MemoryStick 50.0x21.5x2.8 - 64MB 128MB
1999 MicroDrive 42.8x36.4x5.0 - 340MB 1GB ? ?
1999 SDカード 32x24x2.1 2 64MB 128MB 256MB 512MB (1GB) (2GB)
2002 xD-Picture 25x20x1.7 - - - 128MB (512MB) (1GB)
搭載チップの容量(単位 ビット) 256Mb 512Mb 1Gb 2Gb (4Gb) (8Gb)


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