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燃料電池で何が変わるのか?


 便利な生活というのはありがたいのですが、後ろめたさが伴います。”このままの消費を続けると、地球の温暖化や環境破壊が進み、南極や北極の氷が溶け、南太平洋の島々だけではなく、多くの平地(都市)が沈んでしまう。”

 ”さりとて、一度手に入れた快適さは手放せない。もう江戸時代には戻れない。” この矛盾が漠然とした不安を生むことにもなります。後ろめたさが次の行動を起こすための動機になるはずなのですが、どうしたら良いのか解らないために、「まだ大丈夫さ。」と考えるようにしている人も多いと思います。

 地球は太陽からエネルギーを受け取り、赤外線として宇宙に熱を放出し、熱のバランスを取っているとされています。熱くなってきたからと、地球が隠れるくらいに大きな日傘をさして太陽からのエネルギーをこれ以上受けとらないようにするというわけにはいきません。したがって、熱が地球にこもらないようにするしかないということになります。

 そこで、”温室効果が高いとされる二酸化炭素やフロンガスなどをあまり空気中にばらまかないような生活をする必要がある”と言われているわけですが、エネルギーを使わない不便な生活には戻れません。なぜ戻れないかというと、快適さを求めるのが人間らしいと思うからです。そう言う意味では米国は正直で「CO削減は活力を失う」と主張しています。


<後ろめたくない便利さ>

 @便利な生活はそのままで、A活力も失わず、B温暖化も防いで、しかも、C商売になる、という三拍子も四拍子も揃ったようなやり方じゃないと、安定した普及はしないようです。

 ”水素を燃やせば水ができるだけだから、二酸化炭素は発生しない。” だからと言って、”ガスのように水素に火をつけて燃やし、その熱で湯を沸かし、蒸気機関車のように動力を取り出し、その力で発電機を回し、電気を作り出す”という訳ではないようです。

 それより水の電気分解の逆である電気化学反応を利用すれば直接電気エネルギーに変換されるため効率が良く、質の高いエネルギーを取り出せます。電気自動車の動力用として使ってもエネルギーの変換効率は30%から40%にもなり、単純に燃やしてしまう場合の効率(15%)の倍以上となり、同じ距離を走るなら、燃料は半分以下で済むことになります。


<燃料電池のどこが電池なのか?>

 乾電池の場合は使っている間に化学反応が進み、正極の二酸化マンガンや負極の亜鉛が変化してしまうと寿命がくるので使い捨てです。このとき、化学反応に関係する物質を活物質と呼び、変化した活物質を充電して元に戻すのがニッケル水素電池などの二次電池です。

 そこで、燃料電池ですが、この活物質を燃料のように補給できる電池を燃料電池と呼んでいるようです。電気化学反応をするためにはそのための物質が必要で、その物質を使い棄てるか、充電して再利用するか、継ぎ足すか、の違いだと言えそうです。燃料電池の場合の活物質とは水素と酸素ということになります。

 さらに、正極と負極の間に電解液が必要なこと、化学反応であることから温度が高い方が反応が進むことなどが電池としての共通の特徴ということになります。


<燃料電池に関する最近のニュース>

 2002年12月2日、トヨタ、ホンダ両社の燃料電池車が政府に納入されるというのでセレモニーが開かれました。最高速度はいずれも150Km/h以上、航続距離も300km以上です。燃料電池そのものはホンダの『FCX』がバラード社製のPEFC(固体高分子膜型)タイプ、トヨタは独自の燃料電池スタック、燃料の水素は両社とも高圧タンクに入ります。

 両社とも燃料の水素を高圧のタンクに入れていますが、もちろん近くのガソリンスタンドには水素は置いていません。高圧なので取り扱いも大変です。納入したとは言え、車が使われるたびに、トヨタやホンダの担当者がトラブル対応や情報収集のためにガソリン車で後ろについて回るのではないかという気がします。これらの車は走るためにあるというより、燃料電池の時代に入ることを内外に知らせるためにあると言えそうです。

 今回納入された燃料電池車は電気自動車(EV)の一種ですが、電気自動車とは呼ばず、”燃料電池車”という具合に燃料電池を利用していることが強調されています。しかも、今回はトヨタとホンダでしたが、日産は2003年に市販を予定し、米GMも来年には走行試験を始めると報道されています。


<なぜ実用化が難しいのか?>

 優れた特徴を持つ燃料電池は40年以上も前から研究され、一部のタイプの燃料電池は実用段階に入っていますが、まだ一部で使われているに過ぎません。小さな規模なら携帯電話の電源から大規模なものなら原子力発電に取って代わるとも言われています。

 大規模な燃料電池を使えばガス会社がガスを売りながら電力を供給することも可能になります。電気エネルギーだけではなく排熱を利用して冷暖房に使えば、エネルギー変換効率は80%にも達するとされています。資源は持たないが技術を持っている日本にぴったりの発電装置と言えます。

 それなのに、燃料電池の実用化が遅れている理由は何なのでしょうか?

 燃料電池は電気分解の反対だとよく説明されますが、最初の燃料電池の実験はまさにこの電気分解をして水素と酸素が試験管にたまった状態で電気分解をやめて電圧計をつないだら電気が発生していることを発見したというもので、1939年のことだったとされています。

 電流を流し込んだ後で取り出せるようにすることを充電と呼びますが、燃料電池の原型は充電ができる二次電池だったことになります。しかし、使えるようにするためには長い期間を要しました。


<応用範囲が広い固体高分子膜型>

 電解液の成分となる電解質の種類によって、コージェネシステムとして地味ながらすでに活用されているリン酸形、その次世代タイプとされる固体電解質形、火力発電所などの大型施設に取って代わることが期待される溶融炭酸塩形、そして小型軽量で応用範囲が広い固体高分子形などに分類されるようです。

 ホンダのFCXに採用されている燃料電池はPEFC(固体高分子膜型)タイプと発表されています。このタイプは電解質に固体高分子膜を用いていて作動温度は100度以下、発電効率は35%から40%。小型軽量化が可能で幅広い分野で実用化がすすんでいるタイプですが元々は宇宙船用に開発されています。近年大きな電気が取り出せる材料が開発されEV(電気自動車)用途として注目されています。

 日産の燃料電池のタイプは提携先のUTCが燃料電池に関して宇宙への応用も含めて40年の経験があることから、同じ固定高分子膜タイプであると推測できます。

 カシオが発表した携帯機器用の小型燃料電池はこれまでのリチウムイオン電池の半分の重量で4倍長持ちするされています。ここではメタノールを98パーセント以上の変換効率で水素ガスを生成する改質器が開発がキーになっています。

 ダイナブックの東芝もノートPCなど携帯機器への応用をすすめており、2004年に商品化を予定しています。特長は10時間のバッテリー駆動ができることです。


<燃料電池で何が変わるのか?>

 充電して使う電気自動車でも化石燃料を使う発電所の電気を使ったら同じじゃないかという意見がありますが、発電所のエネルギー変換効率は40%、一方自動車のエンジンは約15%とされています。おなじCO排出量で、EVなら40Km走れるのに、ガソリン車は15kmしか走れないと言う計算になるため、EVの方が環境に易しいことになります。

 しかし、環境に易しいという理由だけで車を買おうとするのは環境省くらいのもので、大多数からは見向きもされずメーカーは商売になりません。燃料電池を使えば変換効率が火力発電所と同じ40%まで上がり、燃費は半分以下にさがるとなれば違ってきます。おまけに環境に気を遣う徳の高い人かも知れないという嬉しい噂が流れるかもしれません。

 かつて水俣病という公害病が起こり、その闘いは現在も続いています。海で取った魚にチッソからの有機水銀が含まれていたため、その魚を食べた人がさまざまな中毒症状で苦しんだことは容易に想像できますが、その苦しみに輪を掛けたのは周囲からの冷たい視線だったと言われています。企業であるチッソから利益を得ている人が大多数で、その利益(生活)を守るために邪魔な水俣病患者を同じ人間として扱いたくないと言う心理が働いたのだろうと思います。その大多数にはチッソの労働組合、関連会社、労働組合を支持母体とする政党、そして国。裁判はまだ続いています。

 車の排気ガスで杉の木が枯れることはよく報道されますが、たいていの人はその杉の木より車によってさまざまな形で恩恵を受けているために、木を守ろうという運動はすぐにしぼんでしまいます。排ガスや粉塵のためにぜんそくで苦しんでいる人がいても、その苦しんでいる人と車社会のどちらに世話になっているかというと、圧倒的に車社会です。高尚な環境問題は後回しにして、世話になっている人や物を優先するのが人の道(処世術)・・・となっているのが現実です。

 しかし怖いのは時代が変われば、善人だった人が悪人へと見方が豹変してしまうことです。化石燃料を使っていることで、電力会社、ガス会社、そして車メーカーへの風当たりは強くなる一方です。

 今は環境より景気を良くする方が先だというわけで化石燃料の使用を肯定し続けている間に、燃料電池の実用化を急いで、”クリーン”になっている必要がありそうです。

-2002/12/22


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