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コンピューター連続再起動事件


 それは12月18日の夜、いつものようにPCの電源を入れた。フロッピーディスクドライブがカタカタと音を立て、画面にいつものメッセージが表示された。次にWindows98と表示され、瞬(まばた)きをした次の瞬間、最初のメッセージがまた現れた。何かの間違いだと思いながら画面に目をやると、Windows98の画面が2,3秒間現れた後、画面は黒い背景に変わり、エラーメッセージが約0.8秒間。その後すぐにリセットがかかって最初からやり直し、いつまで経っても立ち上がらない。

 『もしかしたらウィルスか?』ウィルスに感染してハードディスクを初期化した悪夢のような経験が頭をよぎる。初期化の後の再設定を考えると何とも気が重い。『いやいや、こんな時こそ落ち着かないと。まずエラーメッセージが何かを読むか・・・。』

 そのエラーメッセージが表示されるのはたったの0.8秒間。しかも英文。約20分かかって全文を書き留め、読み終わることが出来た。日本語にして要約すると「ハードディスクの空き容量が足りません。取扱説明書をご覧下さい。」となる。たしか、17日の夜、空き容量が足りないという警告のメッセージがでてきて、ファイルを消したり、使わないアプリケーションを削除し、さらにハード・ディスクのクリーンナップまでやったばかりで、空き容量は500メガバイトはあるはず。『やはりウィルスか?』とまた、嫌な予感に包まれる。

 『これはPCを休ませろ』という事だろうと解釈して早々と眠った。

 朝になっていつものように仕事に出掛ける。夕方になって、仕事が一段落した頃、再起動を繰り返すPCのことを思い出した。社内のPCに詳しいAさんに再起動を延々と繰り返すウィルスを知らないかと聞くと、そんな話は聞いたことが無いという。念のために社内のシステム管理者(ウィルス情報に詳しい人)に電話を掛け、同じ質問をぶつけてみたが返事はAさんと同じだった。

 『どうもウィルスでは無いようだ。ウィルスでは無いとすると一体なんだろうか?』そんなことを考えながら帰途に着いた。考えられる原因は以下の二つしかない。

  1. いつの間にか壊れた
  2. 大事なファイルを消してしまった

 再起動を繰り返すPCはPCとは呼べない。空き容量が足りないのならそれを調べてみようと思っても調べることさえ出来ない。『そうだ。英語版のMS−DOS(昔のOS)を起動すればどんなファイルがあって、空き容量も分かるはず・・・。ところが、そのMS−DOS用のシステム・ディスクを持っていない。これで万事休すか?

 家に帰ってPCの電源を入れると夕べと同じように再起動を繰り返す。知らないうちに治っているかも知れないという淡い期待は裏切られた。半分あきらめ気分になり、横になって普段は見ないテレビの番組を眺めながらぼんやりしていると、『たしかリカバリーCD−ROMにはDOSモードがあったはず。』

 段ボールの箱の中に入れたままのリカバリーCDーROMをセットするとリカバリーCD−ROMが起動した。DOSモードを選択すると画面は黒くなり、以下の表示になった。

(DOSに興味のある方は枠内をご覧下さい。)
F:\>

とだけ表示された。そこで、

cd c:\

と入力してCドライブに移す。(FドライブはCDーROMのあるドライブ)そして

 ”dir”と入力しリターンキーを押す。ファイルと空き容量が表示された。空き容量は480メガバイトもある。『480メガバイトも残っているのにまだ足りないなんて、なんて贅沢なPCだろう?困った奴だ。』いやいや、そんな困った奴に育ててしまったのは自分かも知れない。そんな自分こそ困った奴だ。

『さあ、これからどうしようか?』

・・・・・・・

 「HPやメールのデータをフロッピーにコピーしてバックアップを取るか・・・。」と考えてもなかなかその方法が思い出せない。本棚でMS−DOSのコマンド集を探してみると幸運にもまだ捨てずに残っていた。

XCOPY *.* A:\

と入力するとフォルダの中のファイルまでまとめてコピーが取れるはず。しかし、それをやると途方もない時間がかかる。それを考えると気が重い。

『もっと楽な方法は無いのか?』

 そうこうしている間に、

type autoexec.bat

とtype命令の後に、ファイル名を入力してリターンキーを押すと、autoexec.bat や config.sys などのテキストファイルの中身が読めることを思い出した。何しろDOSモードの英語版となると使える方法も限られてくる。さっそく、

type autoexec.batとタイプし、リターンキーを押してみる。

すると、よく分からないコマンドが並んだ。そして最後から2行目に、

if not exist c:\save2dsk.bin ・・・・

 とある。このsave2dsk.binというファイルには何となく見覚えがある。『そうだ。このファイルこそ、連続再起動事件発生の一日前に削除したファイルではないか?このファイルが無いから別の命令を実行して空き容量が足りなくなるに違いない。それなら、同じ名前のファイルがあれば、この命令そのものを実行しなくなるはず。』

 ところが、ワードはもちろん、一太郎もメモ帳さえも使えないDOSの世界。どうやって偽物のファイルを作ろうか?

 たしか、短いテキストファイルだったら作れる命令があったはず。そして思い出したのが以下のコマンド。

copy con save2dsk.bin

これは画面に打ち込んだテキストファイルをsave2dsk.binというファイル名で保存するという意味になる。

適当な内容を書き込み最後にCtrlキーを押しながらZキーを押し、リターンキーを押したら、ファイルが出来上がった。



 こうして、DOSとの戦いが終わり、一度電源を切り、もう一度電源を入れる。今度は再起動を繰り返すことなく、ついに正常に立ち上がった。でもこれは対症療法。いつまた、save2dsk.binの正体がバレて火を噴くか分からない。PCは実にスリリングだ。

-2001/12/20





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