ADSLが下り速度最大12Mbps、さらにそのADSLを利用してCATV【Community
Antenna Television】番組放送を行うという動きがでてきました。昨年Yahoo!がADSLに参入し、他に類を見ないサービスの悪さで評判を落としながらも、春には格安のIP電話も始まり、現在は会員数66万人。9月にはCS放送の13番組をYahoo!のADSL回線に乗せて送り、月額料金2500円でCATV事業という商売も始めるそうです。
ケーブルテレビがインターネットを始めたから、こんどはネットのADSL回線を利用してCSの番組を流すという、放送と通信の業界の戦いが目に見えて始まり出したとも言えます。放送がバスなら通信はタクシーのようなもので、双方ともお客さん(コンテンツ)を乗せて運ぶという意味では競争相手です。
ケーブルテレビなら、同軸ケーブルの中を通る電波の空きチャンネルを利用してCSの13チャンネルを容易に、しかも安定して送ることが出来ます。ケーブルにはもともと数十チャンネルの番組が同時に流されており、番組を観る場合は流れ続けている多くの番組の中から希望のチャンネルだけが見えるように選局して視聴しています。
ところが770メガヘルツに及ぶ伝送容量を持つケーブルテレビの同軸(HFC)に比べ、ADSLの場合は、数多くの銅線と同居した二本のより線で送られるため帯域が狭く(1.1メガヘルツ)、局舎から近い(1km程度)ところでやっと1チャンネル分の動画を送れるかどうかです。
CS放送、つまり動画を送るとなると、ビデオCDとも言われるMPEG1(えむぺぐわん)の不十分な画質でも1.5Mbps、DVD並の画質ならMPEG2となって、5Mbps程度は必要です。採用される圧縮方式はまだ発表されていませんが、安定して動画を送ろうとするとサービス地域はかなり限定されてしまいそうです。それでも、将来の爆発的普及に向けた下準備だと思えば納得がゆきます。
ところで、CATV業界もこれから先、お客さんを取られたままで黙って指をくわえているはずがありません。普及が進んできたハイブリッド光ケーブルのインフラを活かしてケーブルインターネットの伝送速度を飛躍的に引き上げてADSLを引き離すことは可能でしょうか?
最新のケーブルの伝送帯域は770MHzくらいはあるようです。ケーブルテレビは普通のテレビ放送が見難い地域のための共同アンテナの役割もあるため、VHFの1チャンネル(90MHz〜)から12チャンネル(〜222MHz)までの周波数はそのまま残しておく必要があります。さらに、90MHz以下の帯域はインターネットの上り伝送や、FM放送、さらに電話などで使用するため、222MHzから770MHzまでの帯域がケーブル各局でチャンネルのプランが可能です。
仮に222MHzから770MHzまでの約550MHzの帯域を全部インターネットの下り用に割り当て、64QAMと呼ばれる変調方式を用いてデジタルデータを乗せれば計算上は以下の伝送速度が得られます。
550 x 5 = 2.75Gbps
信じられないくらい高速です。CATV網の外とつなぐバックボーンの容量や光ケーブルのサービス(100Mbps)さえ遙かに凌(しの)ぐ高速通信です。しかし、これはもちろん潜在力です。
実際に使用されているケーブルモデムの仕様をみると、インターネットの下り用としてい空きチャンネルの1チャンネルを使用しているようです。つまり使用している周波数の帯域は6MHzだけです。従って64QAM変調方式を使った場合、
6 x 5 = 30Mbps(下り最大)
となります。あと、上り下りが対象でそれぞれ14Mbpsというモデムも使われています。したがって、現在使用中のモデムはそのままでも、14Mbpsくらいまでは増速できることになります。
調べてみると、たいていのケーブルモデムはファームウェアの書き換えによってモデム内のいくつかの設定を変更できるようになっています。この書き換えによって増速が実現できます。
- スピード制限
最大下り速度が14Mbpsや30Mbpsでも設定によって最大256Kbps、512Kbps、2Mbps、8Mbps、・・・30Mbpsと設定を変更することが可能です。
- 使用チャンネル周波数の変更
222MHzから770MHzまでに存在する空きチャンネルのうちのどのチャネルを利用するかを選択します。増速をすると、共有するユーザーが多い場合は、別のユーザに占有されて伝送速度が下がってしまう可能性があるため、ユーザーを別のチャンネルに振り分けることも可能です。しかし、空いたチャンネルが少なければこの方法にも限界があります。
こうしたCATVのしくみを考えれば、最大データ転送速度100Mbpsを誇る光サービスの時代になっても、ケーブル網の4チャンネル分を使用できるモデムに切り替えれば理論的には”最大120Mbps”のサービスさえ可能だということが分かります。
しかし、現状のCATV局はアナログ方式を使ってテレビ番組を送り出しています。これは限られた帯域の使い方としては効率がよくありません。デジタル化の準備も整わないうちに、インターネットに代表されるデータ通信の時代に代わってしまいました。
しかし、好きな番組を好きな時間に観ることを可能にするVOD(ビデオ・オン・デマンド)を電話線を使って実現しようとして、米ベルコア研究所が開発した技術がADSLだったというのは皮肉な話です。
それでも、小田急ケーブルテレビジョン、東急ケーブルテレビジョン、JCOMで採用されているケーブルモデムを製造している米Terayon社はデジタルビデオ関連製品のメーカーである米Imedia社を買収しました。これは近い将来、ケーブルテレビ業者向けにビデオ配信システムとインターネットアクセスを統合した製品を提供するためです。
この小さなニュースはCATVのデジタル化がこれまで予定されていたデジタル化によって実現されるのではなく、同じデジタル化でも2、3周は進んでいると思われるインターネットによるデータ伝送を拡大する形で実現される可能性が高いという、大きな流れを意味しているように思えます。
-2002/7/27
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