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友人の恋人


 編者が学校の近くに住む部屋を探していたとき、その彼は彼の住むアパートを薦めてくれた。それから編者と彼はいわゆる同じ屋根の下というやつで暮らすことになった。一方では編者のやっていたバイトを彼にもやるように薦め、そのバイトが終わった夜8時頃によく喫茶店でとりとめのない議論をした。そして就職する時期がやってきた。久しぶりに彼は編者の所を訪ねてきた。彼は家業を継ぐために研修をしているらしい。家業は地元では名の知れたところで地元の長者番付にものるほどらしい。たしかに同じ隣同士に住んでいても彼の生活は裕福だった。ときどき品の良い和服を着こなした彼の母親が彼の部屋を訪れ、編者も何度か挨拶したことがある。

 彼は研修をしていくなかで彼女を見つけたらしい。彼にとって彼女は若すぎるにもかかわらず、しっかりした考え方を持ち、それがために彼もその彼女に惹かれたようだ。我々が久しぶりに会って話をしている間の殆どの時間がその彼女のことを説明するために費やされた。すでに二人の仲は恋人になっていた。

 恋人達が次に目指すものはより長く一緒にいられる時間をどうしたら作れるのだろうかと腐心しそれがどうしたら実現出来るかを考えることだ。彼らは結婚を考えた。しかし、若すぎる上にしっかりしているという彼女のことを彼の親は気に入らなかったらしい。親には反対された。しかし彼は彼女を失いたくない。そんな話を語り続けた。しかし答えは見つからない。彼はその研修が終わった後、海外研修に出るらしい。

 彼の親は海外研修にも行く必要があるからと彼女を遠ざけようとした。しかしそれはいかにも分かりにくい理屈だと思う。本当の原因はそうした研修などとは関係が無く、彼女がしっかりし過ぎていることが家業を危うくすると親は考えたらしい。編者ならしっかりした女房に叱られることも快感だと思うがその家ではそうもいかないらしい。結局何の解決も無いままそこで話は終わった。

 その話も忘れかけていた頃、編者は就職先の近くのあるアパートに引っ越した。そんなある休みの日、その彼女が一人で一輪の赤い花を持って編者のところを訪ねてきた。たしかに彼の言う通り若い。上にセーラー服、下はズボンだった。どう考えても友人のとの年の差は7歳はある。でも今考えるとたいした差ではない。彼女は彼から編者の話を聞いていたらしく、相談にのって欲しいと訪れたようだ。彼女の話も彼から聞いた話と同様思いが叶わない気持ちを訴えるものだった。

 いくら相談されても編者がよい答えを持っているわけでもなく、ただ協力をすると言うのがやっとだった。彼女は一通りの話をした後で、ありがとうございましたとお礼を言って帰って行った。

 それからその彼女に会うことは無かった。すべての研修が終わったと思われる数年後、編者は友人に年賀状を出したが、帰ってきた葉書に彼女の姿は無く、相変わらず彼は一人だった。今はどうなっているのか知らない。

 それほど好きになれる相手に巡り合う機会は長い人生とはいってもそう何度もあることではないと思う。彼からは結局どうなったのかいまだに聞いていないし、彼の方から言い出さない限りこちらからは聞かないようにしている。

-2001/01/03




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