たとえば酒が好きなら
その酒を極限まで美味しく飲むのが酒飲みの美学。
ところがその美学に近づくのは難しい。
禁煙による副作用から
酒の量が増えた。
気がつけば、毎日ワイン一本。
多いと知りながら、
減らす手だてに手を焼いていた。
自分が嫌がることを
無理に始めても長続きしない。
だから無理はできない。
好ましいことなら、本能的に
そこに近づこうとするに違いない。
人類共通のこの性質は、
古代ギリシャ以来快感原則と呼ばれている。
そこで自分にとっての、
酒についての至福の時は
何かについて考えた。
それは
旨いと感じられる適度の量を
毎日飲むことだった。
毎日飲めば百薬の長となり、
しかも美味しいと感じられる無駄の無いアルコールの量は、
350mlのビール一缶に相当する、
という結論に達した。
それから私は、
自分の本心に問いかけた。
それは、ターゲットとなる酒の量に
不満は無いか、
という問いだった。
最終目標としては良いが、
急にそこに持ってゆくのは無理だ、
という返事をもらった。
自分の本心とのやりとりに、
ウソは禁物だ。
正直であらねばならない。
正直であることだけが
自分自身を説得できる。
次にその目標に到達し、
優雅に酒を味じわっている自分の姿に
美学を見出すことにした。
そして、ことあるごとに、
その姿を想像することにした。
それを続けたある日のこと、
ワイン一本をビール1リットルに切り替えた。
容量は増えているが、
アルコールの量は確実に減っている。
それを一週間程度続けたある日のこと、
500ml缶と350ml缶の組み合わせに切り替えた。
そしてさらに日が経った頃、
次は同じ容量で
アルコール度数の低い銘柄に
切り替えた。
こうやって
本心と相談しながら、
無理をせず減量を続けた。
そして数ヶ月が過ぎた現在、
アルコール度数の低い、
500ml缶一本となった。
目標にはまだ到達していないが、
着実に目標に近づいている。
好きなものを
最も美味しく味わうことは、
当たり前のはずなのに難しい。
それは、
自分が何を好きなのかを、
自分に問いかけていないせいかも知れない。
-2003/12/2
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