ストレス・コーピング(stress coping)のコーピングとはストレスを評価し対処しようとすること(大辞林第二版)です。今回はこのストレス・コーピングについて考えてみました。
世の中にストレスが無い状態というのはあるのでしょうか?最もストレスを感じない世界は母親のお腹の中で胎児として羊水に浸かっている状態ではないかと考えられます。無重力状態での眠りはとても快適だったという宇宙飛行士の発言はこれを裏付けているようにも思えます。大気圧というストレスさえ感じない宇宙での眠りは快適であるに違いありません。
実際の生活では大気圧が存在し、自分以外の人間の存在を意識し、食うためにも働く、という具合にストレスにさらされることになります。ストレスとは生物学的に成長して成熟しやがて老化して死に至る過程で、自分の自由な意志を修正しようとする力のことではないかとも考えられます。それは外から来ることもあり、自分のなかで増殖することもあると考えています。
好きな食べ物だけ食べて良いのなら、嫌いな物もたまには食べなきゃいけないというストレスは無く、好きな人とだけ付き合えるのなら人間関係のストレスも無く、好きな仕事だけやってお金が手に入るのなら仕事上のストレスも最小限になります。
自分の意志を曲げようとするストレスより、自分の意志が強ければ、恐らくそのストレスを跳ね返してしまうでしょう。しかし、もともと自分はどう生きてゆきたいのかという基本的な意志さえ薄弱なまま成長続けるなかでさらされるストレスは弱い意志を曲げ、それでは嫌だから元に戻そうとして戻らずストレスを感じることになります。
となれば、人間の成長のレベルに応じてストレスへの対処法が違うのではないかという気がしてきます。以下に3段階の成長のレベルに応じた対処法(ストレス・コーピング)を整理してみました。
- 初期段階
世の中を自分の欲を満たしながら無難に生きてゆく方法は悪者にならないことであり、出る杭にならないことです。それでもやはりストレスにさらされて疲れてしまうことが多くあります。そんなときのストレス・コーピングとは悪いのはすべて自分以外の人の所為だと考えることでしょう。確かに効果があります。自分の悪い部分や醜い部分を知らなくても生きてゆくことが出来ます。このストレスコーピングの欠点は成長しないことです。たしかに、成長することは大事でも、過度のストレスによって体が参ってしまっては意味がないので、この方法は捨てられません。
- 第二段階
初期段階を過ぎた人はうまく行かない原因はどうも自分にあると考えるようになります。人のせいにはできず、自分が頑張れば何とかなる。ところが頑張っても頑張ってもうまくゆかない。こんなときに心的栄養失調になる恐れがあります。心的栄養とは将来に対する希望では無いかと考えます。
こんな時に有効なのが気分転換です。リフレッシュという言葉もよく使われます。あるいは恋人を見つけるのも良い方法です。人のせいにしない分、成長していることになりますが、この段階もまだ本来のストレスコーピングになっていないように思えます。
- 第三段階
本来のストレスコーピングはストレスの原因を取り除くことだと考えているのですが、これにはある程度の努力が必要だと思います。特に競争社会では仮に勝ち残って一番になっても、次は追われる立場になります。勝ち組にも終わりは無く、落ちこぼれないように働く場合もストレスが溜まります。
有名人の話は希な例であるようでいて実は凡人にも共通するところがあります。それは自分自信の目標を持っていることです。自分の目標であれば、階段を一段一段上るように着実に足下を見ながら前に進むことが出来ます。後ろを振り向いたり、追い抜かれてその人に追いつこうとするとペースを乱されます。
米国でもヒーローになったイチロー選手は首位打者に戻ってもクールなままでしたが、200安打を達成したときにはさすがにうれしさを隠しきれなかったようです。どんな人でも自己の目標を達成することが最大の喜びであるに違いありません。
無くなることのないストレスに対処するために自分だけの目標を立てたり、うまく行かない人間関係などの原因を考えたりするだけでは疲れてしまうので、必要になるのは休養と心的栄養だと思います。この心的栄養とは何でしょうか?
同じ努力でもその辛さを和らげたり、あるいは逆に愉快に変えてしまうのは”明日が楽しみ”という気分で、それはストレス・コーピングに必要な心的栄養素だと考えています。体を作る栄養素の一つ、蛋白質を摂取するための手段として肉や野菜など多様な食べ物があるように、”明日が楽しみ”という気分を手に入れるための手段も多く存在します。
五感を通して受ける刺激のなかで重要なものの一つに言葉があります。何しろ人間は言葉を使って考えているのですから。いろいろな食物から同じ栄養素を摂取しているように、心的栄養素”明日が楽しみ”につながるいろいろな言葉を自分に与える必要があると考えます。あるいはそんな言葉を使っている人とより多くつきあうという方法もあります。
いろいろな言葉を使う必要があるのは同じ言葉だと飽きてしまうからです。飽きないようにいろいろな言葉をいつも考えながら、あまり意識しないで発してくれる人は自分にとっては大事な人です。自分自身がそんな人になることから本来のストレスコーピングが始まるように思います。