”酒好きの人や酒に強いと言われる人ほど、長くつきあうためには距離を置いたほうがいい”と、初回の同タイトルのコラムで書きました。その後の調査で、アルコール依存症の患者はここ30年間に二倍以上に増え、現在は220万人を越えていること、さらにその家族を含めると1000万人を越えるだろうことを知って想像以上に状況が厳しいことが分かりました。
自分自身はその依存症ではないと信じてはいるものの、依存症は”否認の病気”と呼ばれていて、本人も家族も酒に関することから目をそらし、事実を認めようとしないそうです。そういう態度がまずます状況を悪くしているという事実から、もうすこしきちんと調べる必要があると感じました。
<悲しい酒>
美空ひばりさんがアルコール依存症でそのために寿命を縮めたという事実は知りませんでした。有名な話でも知らない人が多いのは、合併症の方が発表されるから、という事情があるようです。
死亡記事には”肝臓病で入退院を繰り返した後、大腿(たい)骨骨頭壊死(えし)で亡くなった(1989年、52歳)”としか発表されていません。
記事を書いた記者ももしかしたらひばりファンの一人で、いわゆる”アル中”のイメージと”女王”美空ひばりのイメージがどうやっても重ならないために、(マスコミさえも)その事実を認めたくなかったのではないかという気がします。
依存症患者の大半が末期になると涙を流しながら酒を飲むというのが実態のようで、酔って暴れるというイメージからはほど遠いものがあります。
アルコール依存症の有名人は他にも太宰治、ビリージョエル、マライア・キャリー、マイケル・ジャクソン、ライザ・ミネリ、エリザベス・テイラー、フォード元米大統領夫人・・・等、従来の”アル中”のイメージとはかなり違うことが解ります。
<刷り込まれたイメージ>
一秒間に24コマの絵からなる映画でそのうちの一コマだけにポップコーンの絵を入れたところ、ポップコーンの売り上げが伸びたことがあったそうです。これは観客が気が付かない間に潜在意識に訴える方法で、その後このタイプの宣伝は禁止されました。客を”騙(だま)す”卑怯(ひきょう)な方法だからというのが禁止の理由だったと記憶しています。
それなら絵や音ではっきり見せれば問題ないのかというとそうでもありません。さわやかなタバコのコマーシャルは繰り返し放映されることによってタバコと爽快感が結びついてイメージされるようになります。琥珀色のウィスキーの深い味わいをイメージしたコマーシャルを繰り返し流せば、ウィスキーと人生の深い味わいが結びつくことになります。
このイメージは100%誤りだという訳ではなく、ニコチンやエチルアルコールという物質の薬理効果と一致する部分もあるわけですが、副作用が語られないところが問題です。
<メーカーのインフォームドコンセント>
”当社の製品を含め、一般にアルコール飲料はさまざまなしがらみに気を遣っている理性を抑え、感情を解放しリラックスさせる効果があります。しかし、飲み過ぎていると気が付かないうちに依存症になります。一度依存症になると体は治っても、依存症そのものは治ることはありません。程々のアルコールをたしなむ能力は失われたままでです。このため、一杯くらいなら大丈夫だろうと手を出してしまうと、しばしば飲み過ぎて死に至ります。しかも、日頃どれだけ飲んでも大丈夫なのかという適量は個人差が大きすぎるためよく解りません。言われている適量が体質も体格も違うすべての人に当てはまるはずもありません。それでも、良ければどうぞお楽しみ下さい。”
こうした情報を企業がCMと同時に流す時代は来ないと考えた方が良いようです。
<個人でできる対策>
すでに依存症になっている220万人以上の人は、潔く症状を認めて”
自助グループ”に参加することが人間らしく生き残るための唯一の方法のようです。しかし、多少依存はしているものの、幸いにもまだ依存症に属さないより多くの人たちはどうすれば良いのでしょうか?
残念ながらメディアから流れてくる情報の多くは、一部の都合の良い情報だけ、しかも場合によっては結果的には”誤り”も含まれているようです。ポリフェノールは赤ワインからとらずとも、すでに十分という国民生活センターの
ポリフェノール含有食品の商品テスト結果は赤ワインを飲むための言い訳を失うニュースでした。
依存症の初期段階に至る習慣、つまり
”『晩酌』を肯定的に描くメディアやメーカーは信用できない”と考えたほうが良いようです。
アルコールとのつきあいを、飲み会などの”機会飲酒”だけにすると寂しくなります。習慣にしていることをやめるのは一種の”喪失体験”になるため、回復のために苦痛を伴うことが多いからです。
うまくゆくためには、代わりに何かを得る必要があるようです。これは失恋の後に新しい恋人を見つけると元気を取り戻すことによく似ています。つまり、一方が増えれば一方が減るという関係にある、コーヒーなどの香りを深く味わう時間を増やすのも一つの方法かもしれません。
-2001/12/27 初版
-2002/11/10 全面書き換え
●データ
- 日本の依存症患者= 220万人
- 依存症患者の平均寿命= 52歳
- 成人の飲酒者= 6300万人
- 飲酒人口1人当たりの純アルコール消費量=約8.8l
- 適量= 1)一日〜1合、休肝日週2日(厚生労働省)
2)一日1合〜3合、休肝日週1日〜2日(酒造メーカー等)
3)適量は個人差が大きく、量はわずかでも依存症になる人はいる(宮千代加藤内科医院)
4)お酒は毎日一、二杯以上飲み続けると高血圧や脳卒中の原因になり得る(米心臓協会)
- 大量飲酒= 日本酒約5合半、ビール大瓶約6本、ウイスキーではダブルで約6杯以上(アルコール150ml)
- 日本の大量飲酒者= 234万人(飲酒人口の約3%)
- 連続飲酒発作= 数カ月の断酒期と、数週間の飲酒期を繰り返す。
- 山型飲酒= 連続飲酒発作の後しばらくは断酒するが数週間ないし数カ月後に、少量飲酒し連続飲酒発作につながる。
- 否認の病気= 本人も、周囲も、酒の問題からは目をそらし、認めようとしない。あるいは自力で対処できると考え、病気だとは認めない。
- ネクタイアル中= いかにもアル中らしいイメージの依存症は全体の5%以下、大部分の患者は、一見まともな普通の人々などで、現代に多いアルコール依存症。
- ブラックアウト= 飲んだときの記憶が失われてしまうこと
- 関連疾患=肝臓障害(脂肪肝、アルコール性肝炎(食欲不振、吐き気、黄だん、発熱)、肝硬変、肝臓がん)、腹水、アルコール性痴ほう、胃穿孔(せんこう)、食道がん、糖尿病、高脂質血症、痛風、肺炎、不整脈、高血圧、慢性すい炎
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