最近昼食のためにあるレストランに入ったんですが、店の中があまりにも暗かったため、一瞬まだやっていないのか、と思ったほどです。ところがふつうに営業していました。海外では高級な店ほど照明が暗い、という人もいます。本当に暗い店ほど高級な店なんでしょうか?
料理が運ばれてくるまでの間、テーブルに置かれた蝋燭の炎を眺めていたら、これまで入ったことがある暗い店が頭の中を駆けめぐりました。最初に思い浮かんだのはバイトの下見のために入った新宿の高層ビルにある店です。あまりの暗さに面食らいましたが、勢いで中に入ってしまいました。ウェイターに案内されて席に着いたのですが、渡されたメニューが暗くて見えません。暗くて見えない、とウェイターに言うと、なれた手つきでポケットからライトを取り出し、メニューを照らしくれました。
そこはどうも、食事のためと言うより、カップルが夜景でも眺めながらゆっくりとくつろぐための店だったようです。メニューにある料理も高めで、場所代のような怪しい匂いがしました。
店の怪しさはともかく、暗くなると覚醒レベルが下がりくつろげるのはたしかです。これはつまり、客が長居することをも意味し、客単価の高い(高級な?)店でないとやってゆけない、とも言えます。たとえばハンバーガー店でも、店内が明るく暖色系の赤やオレンジや黄色を多用している店ほど客の回転率を上げることを狙っており、逆に落ち着いた色を使った店になるほどハンバーガーの値段も高くなっています。
しかし高級な店が暗くあらねばならぬ一番の理由は、光のグラデーションを演出し楽しむためではないか、と思います。たとえばダイヤモンドをちりばめたようなとよく形容される都会の夜景は、明るい昼間には絶対拝めません。たとえばステンドグラスの豊かな色合いに触れるためには教会の中を蝋燭のほのかな光で照らす必要があるのです。
そしてたとえば夕焼けに見られる豊かなグラデーションを室内に再現しようと思えば、照明を落とさざるを得ないのです。ところが日本では暗い店と言えば怪しい店ばかりで、それを嫌って暗いという理由だけで敬遠する人がいるのは残念です。
テーブルに蝋燭が置いてあるこの間の店は、高級ではないものの通にはよく知られた店のようです。隠れ家のような雰囲気に惹かれてやってくるのかもしれません。そこでは暗さがもたらず豊かな光のグラデーションを利用して、60年代のアメリカを演出していました。
-2004/11/30
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