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水戸黄門的日本人論


 欧米のように日曜日の午前中に教会に出掛けて司教や牧師さんの話を聞くわけでもなく、タイのように日常的にお坊さんが関わって相談に乗ってくれる訳でもない日本人はどこで教えを得ているのだろうか?おそらく、それはテレビではないかと思う。しかも、初めからそんな高尚な目的があって始まった訳でもないテレビなのに、知らす知らずのうちに、メッセージを受け取り続けている。

 水戸黄門の話なら誰もが知って居るかも知れない。少なくとも子供を持つ親は知っているからそこから得ているメッセージを意識することなく子供に伝えることにもなる。

 悪さをすれば必ず捕まってしまうから悪い人になってはいけない。まじめに働き続ければいつかはきっと良いことがある。こう考えながら生きている人は多い。ではなぜ真面目に働かなければいけないのかと聞こうとすると屁理屈だと言われそうだから質問しない。しかも、実際の生活では番組のように善と悪がはっきりしていることは少ない。殺人や泥棒などの分かりやすい悪はニュースで取り上げられてはいても、直接自分自身が関わることは少ない。

 何が良くて何が悪いことかについて考えようとすると解らなくなるときもある。テレビはなかなかその根本的な部分を面白おかしく教えてはくれない。

 黄門様が一部の団体から献金をもらって依怙贔屓(えこひいき)したり、弥七やお銀が悪さをしたり、助さんや格さんが頼りにならなくなってくると大いに困ることになる。今の時代に黄門さまはいないのかと嘆きながらも待ち続ける人は小泉総理にその役割を期待しているのかも知れない。

 小泉総理は3度目の総裁選でやっと印篭を手に入れた。印篭はあっても、悪代官の尻尾をつかまえて、懲らしめ、めでたしめでたしという結末が待っているわけじゃない。小泉総理は水戸黄門というより、症状が悪化して苦しみ続ける患者に向かって手術を勧める外科医のようなもので、秋からは雇用対策国会という名の麻酔の準備をはじめる。

 麻酔が切れるとまた痛み始めるからいつかは手術が必要になる。小泉総理を黄門さまのように受け止めて、いつ活劇が始まるのかと楽しみにしていると、自分のところにも外科医がやってきて手術を薦められ、自分だけは例外だと思っていたりして驚くことになる。

 日本人の多くが持つ”誠実に生きてゆきたい”という価値観は真面目に働くことを善とする。ところが意外に真面目に働くことの意味を考えない人も多い。仕事が人の役に立つことをすることだとすれば、真面目に働くというのは真面目に人の役に立つように動き回ることを意味することになる。もし、役に立たないのに動き回ってばかりいるのだとすれば病の根は深いことになり、手術が必要だということになる。

 ところが、何が役に立つことなのかということに関してもちょっと疑問がある。本当は役に立っているのにそれに気づかず、要らないものとして街から消えてゆき、効率ばかりで何とも味のない街になったりする。役にはたっていないと思っていたものが消えたとき、始めて必要だということに気がつき、寂しい思いをすることもある。いい味を出せる人は商売が下手だったりして儲からず、やってゆけなくなって姿を消したりする。

 たしか黄門さまはそんな儲からない商売をする人の魅力に気がついて、宣伝してあげたりすることもある。役に立っているのかいないのかということさえ、どうやって正確に計れば良いのか分からない。忙しく働きすぎると、そんなものを見る目を失うのかも知れない。

 良い物を安く作って利益を稼ごうとしてまじめに働き、結果海外に工場を移して仕事を減らし、貧して貪する様は、何のためにまじめに働いているのか、”まじめ”に考えていないのではないかと考えたくなる。それでも、もうそろそろ変わるときが来るような気がする。

-2001/9/18





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