朝の8時50分頃、予定より10分ほど早く彼らはやってきた。そして玄関から廊下を通って洗面所や風呂場に台所にとビニールシートを慣れた手つきで敷き詰めた。そしてそれぞれの持ち場に分かれて作業に取り掛かった。
”これでしばらくはいつものように水が使えない”、そう思いながら、立会いのために休みを取ったその日、居間の角で彼らの作業を横目で見守った。今日は水道管の内側をきれいにする日。だからいつものようには水が使えない。
10分もしないうちに、台所に呼ばれて行ってみると、バイパスの水道の蛇口が流しに向かって置かれていた。いくら水道が使えないとはいえ、全然使えないのでは困るので、長いホースのついた臨時の蛇口をつけてくれたのだ。
水道管の内側をどうやってきれいにするのかというと、水道メーターあたりから、それぞれの水道の蛇口の間に強い圧力で研磨剤をまぜた空気を流すらしい。作業開始から二時間くらいが経った頃、いかにも水道管の内側を磨いているような、地下鉄が通り過ぎるような強烈な音が響いた。
12時過ぎ、お昼の時間になったが作業はまだ続いている。台所が使えないので、近くの「かまどや」で弁当を買ってきて、奥の和室で昼食をとった。普段なら味噌汁をつけるところだが、なんだかそんな気にもなれなかった。
1時ちょっと前、部屋でうとうとしていると呼ぶ声がした。今日の分の作業が終わったらしい。明日の昼過ぎには水を通すという。集合住宅の給水管は20年に一回くらいは給水管の工事が必要で、その工事には水道管をまるごと取り替える方法もあるらしい。しかしそれでは壁を壊したり金がかかったりと大変なので、各部屋を通る給水管の内側を磨いて汚れを取りさらにコーティングしてお茶を濁す工事方法が管理組合の総会で決まったのだ。
水がいつものように使えない期間は一日半。シャワーやお風呂は我慢できてもトイレは我慢できない。トイレで用を足すたびに、風呂場に溜めた水を、バケツ代わりのプラスチック製のゴミ箱を使ってタンクに移す。
バケツを井戸の中に投げ込んで水を汲みあげたり、ヤカンを持って谷に降りて水を汲み、丘の上の畑に戻って火をたいて湯を沸かした子供の頃を思い出した。
-2006/11/30-12/2
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