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客に聞こえる店員の会話


 大寒を過ぎて寒さが身にしみる一月の終わり、床に何か敷きたいと近所の店に入った。玄関マットに足元マット、バスマットに名無しマット・・・、次々に手に取りながら品定めをする。柄物ばかりでどれも今一歩。無地でいいものもあったが値引きは無くサイズも小さい。もう少し大きければ、と考えているところへ怒鳴り声が聞こえてきた。

 本部の人らしい男性店員がフロア主任らしい女性店員に、いつまで探しているんだ、などと言いながら怒っている。送ったはずのカタログが見つからないらしいのだが、客に聞こえていることなんか気にしちゃいないようだ。

 怒られている女性店員の方は謝るより受け流していた。まるで漫才のボケ役のようにトゲを丸める役に徹していた。組織上は怒っている方が上なのかも知れないが客にとってはその場の不快な気分をやわらげてくれるボケ役の方がありがたい。

 いつからか店に置いてある商品と同じくらいに商品を売る側の人間の心理が気になるようになった。それでついつい聞き耳を立ててしまう。店に置いてある商品はその店の現在を表しているが、従業員から漏れ出てくる感情はその店の近い将来を暗示しているようjに思える。

 あるスーパーの食肉売り場で先輩社員が新入社員らしい人に肉売り場のディスプレイについて注意していた。肉というのはあっという間に色が落ちてしまうから・・・、と教えていた。その・・・のところを聞き取ろうとしたが聞こえなかった。何をどうするように教えていたのだろうか?

 それから食肉の産地表示を偽っていることや生肉にビタミンCをふりかけて色を鮮やかに見せているところがある、と言ったようなことがニュースで取り上げられ報道されるようになった。「肉というのはあっという間に色が落ちてしまうから―魔法の薬(ビタミンC)をかけるんだよ―と教えていたのだろうか?

 しかし個人的に困ることは、産地を偽られることでもなければビタミンCをかけられることでもない。ついつい肉を食べ過ぎて体内のコレステロール値が上がってしまうことだ。

 コンビニでも店員の会話はよく聞こえる。朝に晩に一日に二回も利用していたりすると店員の顔や声を覚えてしまう。そして新人が入ると先輩が新人にレジの打ち方などを教えていたりする。その日はいつになく店長が興奮していた。未成年の人が酒を買おうとしていたので、ウチでは売れません、と強い調子で断っていた。その後他の店員にも未成年には酒を売らないようにと指示していた。

 それから数ヶ月後のある日を境に店長の顔を見ることがなくなった。店長の身に何があったのだろうか?この後私は引っ越してしまったため、真相はいまでも分からないままだ。


-2005/2/3




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