朝早い通勤電車には独特の雰囲気があります。まず新聞を折ったり広げたりする音に挿入されるイビキ。”私のウチは駅からも遠くてね。夜は遅いし朝は早い。オマケに睡眠時無呼吸症じゃないかというくらいにいつも寝不足なんです。この大きなイビキが何よりの証拠ですよ。”と動物言語で語っているように聞こえるわけです。
途中駅から息を弾ませながら一人の男が入ってきました。なかなか激しい呼吸が収まりません。”なんとかこの電車に乗ろうと思って、階段をずーと駆け上がって来たんですよ。そりゃあもっと早く起きたらいいんでしょうが、目覚ましを何回も止めている間にいつもギリギリになってしまうんですよ。”と言っているようでした。
どんどん混んできたとき、鼻息を荒くして流れに逆らうような態度を取る人がいました。人の塊が右に揺れればそれに逆らい、左に揺れてもそれに逆らう。”なんで朝早い電車なのにこんなに身動きが取れないくらいに混むんだよ。冗談じゃないよ。”と言っているようでした。
まるで羊の群に混じった一匹狼のような勇ましさ。しかしそれも多勢に無勢(ぶぜい)。羊と言えども大群なので、逆らうのは無理というものです。
早朝の通勤電車で違和感を感じるのが人の口から発せられる”高級言語”。早朝であるが故に十分には覚醒しておらず、もっぱら動物言語が語られる車内では、話し言葉を妙に遠くに、しかも少し不快に感じます。これは、意識の下のレベルにいる人が、より高いところにいる人に対して感じるジェラシーのようなものなんでしょうか?
早朝の電車のなかでは、そこに立っているのが不思議なくらいに、まだ多くの人が睡眠状態にあるためなのかもしれません。人間らしさを決める前頭葉の働きが、まだ活発ではないからこそ、動物言語が語られているのです。
もしあなたが通勤電車で痴漢に身体を触られたら、身体をモゾモソさせて拒否するのではなく、「やめてください!」と声に出し、”高級言語”で拒否してみてください。相手は、目が覚めたように驚くはずです。なぜなら、「痴漢行為」は動物言語によるコミュニケーションである、という気がするからです。
-2006/3/25
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