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感情進化論で考える宿泊拒否問題


 ここで言う感情進化論は、とっさの危機を避けるための第一段階(一次的感情=即応システム)、それよりは少し時間がある場合の熟慮して行動する第二段階(二次的感情=熟慮システム)、そして最後は人間にしかない第三段階(三次的感情=メタ管理システム)へと進化します。この三段階の進化を、ハンセン病元患者らの宿泊を拒否して始まった、宿泊拒否問題に当てはめながら考えてみたいと思います。

 ハンセン病に感染して発病した場合、手足の感覚が無くなるために傷を負ったことが分からなくなり、やがて手足の指を無くしたり、まつげや眉毛が抜けたり、顔が変形したり、鼻が落ちたり、角膜炎で視力を失ったりするそうです。これが事実なら、おそらく何も知らない人が患者の姿を初めて見たら嫌悪感を感じたり脅えたりするはずです。

 未知の対象に接近して不安を感じ、すぐにでもその場から遠ざかりたいと感じ取るのは、特に急を要する場合には重要な感情の働き(一次的感情)だとされています。従って、ハンセン病と聞いたり、あるいは直接見かければ、ホテル側の人間なら泊めたくないと感じ取るはずです。

 しかし不快感のままに拒否できたのは過去の話です。現在では治療薬が開発され、治る病気になったため、もはや恐るべき未知の病気ではなくなっています。従って、無用な不安はいらないはずなのですが、元患者らの姿の異様さは相変わらずだろうし、ハンセン病について詳しく知らない一般の人なら、やっぱり泊めるのは嫌だ、と思うはずです。

 そこで次の段階の二次的感情の中で葛藤が始まることになります。もし宿泊を拒否したらどうなるだろうか、冷たいホテルだという評判が広がって客がこなくなるのではないか、とは言っても、宿泊を受け入れたら気味が悪いし、やっぱり病気がうつるのではないか、と考えるはずです。

 今回の場合は宿泊を拒否するという結果になりました。この判断そのものが強く非難されるべきだ、という気にはなれません。

 しかし人間ならさらに次のステップ、三次的感情に進むことになります。

 こうやってどうしたものかと嫌悪感と闘っている自分の姿を客観的に眺めながら思案を始めます。自分はこのやり方で良いのだろうか、と自問自答するわけです。

 このステップになると、どちらの方がホテル経営上儲かるのか、と思案する打算的な段階ではなく、自分はどういう仕事をしたいのかというその人の哲学の問題になります。ホテル業が好きで始めた人なら、目指すべきホテルマンのイメージを持っているはずなので、そのイメージに現実の自分を近づけるために、どうしたものかと思案するわけです。

 今回の場合、トップの言動を見て感じたことは、どうもこの人はホテル業を好きで始めたわけではないようだ、ということでした。となれば、第三のステップまで進化することはあり得ないのかも知れません。

-2004/2/18



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