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少年はなぜ自宅に放火したのか?


 結果はいろいろですが、誰もが自らの生活を最適化するために行動しているはずなんです。しかし、放火事件を起こすという行動はどう考えても、”最適化”している、とは思えません。なぜこのような事件が起こるのでしょうか?

 少年(世田谷放火事件容疑者(14歳))の両親は少年が小一の頃離婚していますが、小学生の間は特に大きな問題を起こすことなく母親と暮らしていたようです。中学になり友人を作るために入った野球部で人間関係のトラブルが起こっています。仲の良い友人をつくり、”自らの生活を最適化する”ために入ったはずの野球部で、部員らと仲が悪くなってしまったら、少年にとっての”最適化”の試みは失敗だったことを意味します。

 仲の良い友人をつくるために何らかのサークルに入るのは、金が欲しい人が金のために仕事をするようなもので、なかなかうまくゆかないように思います。好きな仕事が付加価値という名の”金”を生むように、興味のあるテーマのサークルに入った方が、”同志”と言う名の友人ができやすい、と思うからです。

 野球部で友人をつくる、という試みに失敗した少年は、このトラブルをきっかけにしだいに不登校になり、母親に対して暴力をふるうようになり、ついに児童相談所送りとなります。その後、自ら希望して父親と同居することになります。

 母親との同居がうまく行かなかったので父親と暮らしてみよう、という判断はもちろん、少年にとって自らの生活を最適化するための試みです。しかし、この試みでも失敗します。

 転校した学校にはちゃんと通っていたのに、父親からは学校に行け、としかられ、しかも抵抗したら殴られてしまった(らしい)からです。少年は頑張って学校に通っていたことからもわかりますが、学校はあまり心地よい場所では無かったようです。そして新しい家庭も、心地よいものではありませんでした。

 14歳の少年にとって、家庭と学校は生活世界のすべてかも知れません。その両方が我慢を要する対象であるなら、それは耐え難いことです。こんなとき、家出をしたり、過食症になったりする人もいますが、少年は”放火”という行動に至ったようです。

 犯罪は自らの生活の最適化にはならず、しかも事件を起こしたことによってますます不利な立場に追い込まれてしまいます。この犯罪行為は個人としては合理的な行動とは言えませんが、人間を含む生物全体から見ると、おそらくは仕組まれた、冷酷なフォードバックとして機能することになります。

 少年という一人の生命体が、家庭や社会の歪みを世に示すためのフィードバックとして機能するわけです。社会にとっては、より大きな問題が起こらないようにするための貴重な情報、としての意味がありますが、個人の生き方としては、圧倒的に損な役回りです。

-2006/3/11




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