すべてが現金決済、あるいは物々交換なら仲介者の出番はありません。売りたい人と買いたい人がいて、値段が合えば交渉が成立するからです。ところが、モノや金がその場に無いとなると、あるいは両者が直接会えないとなると、話はもう少しややこしくなります。
仮に後で必ず払うからと手の指紋までつけた手形を渡されても、相手が信用できなければ交渉は成立しません。ところが、両方の人間に信用のある第三者が登場し、その人が発行した券を使うようにすれば、交渉が成立することもあるはずです。実際、こうやって政府より信用できると評判になり広まったのが銀行だそうですから、銀行業務とはずいぶん名誉な仕事であったようです。
不良資産がどうのと、銀行への風当たりが強い時期が続きましたが、それでも大部分の人たちが銀行に金を預けているのは、それでもまだ給与振り込みは任せられると考えていたり、タンスにしまっておくより安心だし便利だから、と思っているからに違いないのです。これはつまり、なんだかんだ言いながらも、銀行は金を出す人と受け取る人の間にいて、両者の利益になるような仲介業務を続けている、と解釈することができます。
ミッキーマウスを創造したウォールト・ディズニーとその作品を楽しむ人々、両者はクリエーターとファンの関係です。創業者は亡くなりましたが、ディズニーの会社は存続し、著作物を保護するためと称して政府に圧力をかけ、ミッキーマウスのキャラを独占する権利を延長しました。そこまでやると、これはクリエーターのためでもファンのためでもなく、仲介業としての会社が食っていくためなんだろうなあ、と受け取られるだけではなく、ミッキーマウスのイメージが汚れてしまったように思います。
ディズニーが、カンヌ国際映画祭で賞を取った「華氏911」を配給しないとしたのは、政府や議会に借りがあると言わんばかりの行動で、これもディズニーのキャラのイメージを劣化させてしまいそうです。真意はともかく、イメージの記憶が脳内で連想記憶されるしくみになっている以上、ディズニーの動きはディズニー製のキャラに数珠のようにくっついて、それがボディーブローのように徐々にイメージを劣化させる、と思えてなりません。
リコール隠しで三菱自動車の存続が怪しくなっていますが、この会社にも車を作りたい人がいて、会社の内外にはその車に好んで乗ろうとするファンがいるはずです。同じ社内ではありますが、会社の役員や社長はクリエーターでもファンでもなく、たいして車に興味もない、両者の関係を劣化させる仲介者なのかも知れません。
かなり傾いていた頃の日産の役員たちの中には、車そのものに興味を持っていない人が多くいるらしいという噂がありました。つまり彼らもまた、クリエーターでもなくファンでもなく、ただ両者の関係を劣化させる仲介者だったようです。
コピーコントルーCDの中に、音質を劣化させることでデジタルコピーを防ぐ方式があるらしい、という話を聞いたとき、それはずいぶん悲しい話だ、と思いました。クリエーターの著作物を劣化させるなんてことは、クリエーターにもファンにもできないことで、作品に興味のない人のしわざです。
関係を劣化させる仲介者はファンにとってはもちろん、クリエーターにとっても排除すべき敵です。
もしかしたら、自分もそんな仲介者の一人かも知れない、と思ったら、できるだけ速やかにそうした業から足を洗うことをお薦めします。いろいろ事情があってすぐに仕事を変えることはできないかも知れませんが、もっと自分のライフスタイルに合った、名誉な仲介者としての仕事が、必ずあるはずだからです。
-2004/6/13
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