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先進国という名の幻想


 日本は”先進国”と呼ばれています。いや、呼んでいます。先進国という言葉は日本語なので日本をそう呼んでいるのは日本だけだということになります。先進国は英語ではan advanced country(一歩先をゆく国)。先進国首脳会議は The Summit Conference(頂上会議)。先進七カ国は The Group of Seven (Industrialized countries(最も工業化が進んだ七つの国)。

 これらの三つの言葉から、「世界は工業化という目標に向かって競争を続けており、日本はその先頭を走る七カ国の中の一国である。」登山家がより高い山を目指すように先進七カ国が集って行う会議はサミット(頂上)と呼ばれて、いかにも雪を頂くエベレストの山々のようです。

  ところがこの”先進国”という日本国民のプライドをくすぐるような言葉は工業化が進んで儲かっていてお金を持っているという意味です。そこの国民がもっとも暮らしやすい国という意味でも、最も充実した人生を送っている国民が住んでいる国という意味でもありません。


 それではなぜ日本は工業化を目指してその先進国の地位にとどまろうと頑張っているのでしょうか?それはもちろん豊かになって幸福になるためです。工業化が進めば国も国民もお金持ちになれるので、国は電気やガスや道路や、経済の基盤である銀行を含む金融の基盤をインフラとして整え、国民は欲しい物を手に入れ長時間の労働(苦役)から解放されることを目指します。

 日本が先進国であってインフラが整っている証拠として、デフレ不況と言われながらも、物価が安定していることがあります。急速に自国の貨幣価値を下げ続けるアルゼンチンとの差はそこにあると言えます。


 土地を持たない小作人が働いても働いても暮らしが楽にならないのは土地を所有していないからだという考え方があります。土地を持ち、お金を持つという具合に所有する物が増えるにつれて、食うに困らなくなるばかりではなく、欲しい物も買えるようになり、教育も受けられるようになり、レジャーも楽しめるようになり、社会的な発言力も増してきます。

 こうした功利主義の考え方は(3月16日付けのコラムでも書きましたが)産業革命当時のイギリスに始まり、世界の市場経済システムを取り入れている国々の考え方の基礎になっていると言えます。そのトップを走るのは米国であることは言うまでもありません。


 しかし、この伝統の浅い功利主義はより長い伝統を持つ国々(日本を含む)の間で、何かが違うのではないかと気が付いてもおかしくありません。”先進国”という特権意識をくすぐる言葉が、工業化によって得られたGDP(国内総生産)という指標でしかないということ、つまり頑張って、その結果、どのくらいお金持ちになったかを計るものさしでしかないということです。

 恐ろしいのは”先進国”という言葉ゆえに、それだけでその国の価値は高く、国民は幸せであるに違いないという幻想を抱いてしまいかねないことです。


-2002/3/23







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