高速道路を整備するための道路公団や郵便事業を行う郵政公社では民営化が進められようとしています。民営化で良くなるのでしょうか?今回はこの点について考えてみたいと思います。
日本道路公団が財務諸表を隠蔽(いんぺい)したとかしなかったとかでもめています。財務諸表とは家庭で言えば家計簿のようなもので、つまりは公団が赤字なのか黒字なのか、借金があるのか無いのか、解ってしまう資料です。
実のところ道路整備を担当する団体は民営であろうが、国営であろうが、それらの中間的な存在である特殊法人であろうが、ちゃんとやってくれればどちらでも良いのです。何が問題なのでしょうか?
それは、臭い物にふたをするか、それとも公表するか、の違いだけだろうと思います。民営化すれば、おそらく株式会社になるはずです。株式を公開したら、株主に対して、会社が危ないのか順調なのかを示す財務データを公表する義務があります。
東京証券取引所(以下東証)に会社の株を公開しているのなら、業績見込みを東証に報告する義務があるし、見込みがずれたらずれたで、やはり報告しなければなりません。違反すると上場を取り消されて、あるいはその前に評判が落ちて資金が集まらなくなり、結果的に会社がつぶれるような事態に陥る可能性があります。
ところが、不思議なことに国営や特殊法人の場合、株主に相当する国民(納税者)に公表しなくてもすむようなしくみ(法律)がつくられているようです。特殊法人は官僚にとっての大事な天下り先だったりするため、くさくてもふたができるような条文を、国会議員から頼まれたときに作る法案に盛り込むわけです。
それなら、国会議員が自分で法案を作ればいいじゃないか、と思うかも知れません。ところが、議員が独自の法案を提出することは、所属する党がそれを禁止していたり、そもそもその能力がなかったり、スタッフが足りなかったりするようなのです。
そこで官僚に頼むことになります。頼まれる方の官僚は議員の仕事を代行するだけのお人良しではありません。自分や所属する省庁の後輩のための再就職(天下り)先を安定的に確保するしくみを法案に盛り込むわけです。
その際、頼まれてもいない日本株式会社の株主、つまり納税者に対して、自分たちや天下り先である特殊法人の働きぶりを公表するようなしくみを盛り込むはずが無い、と思われます。
それでなくとも、犬でさえ骨を隠すように、人間なら誰もが都合の悪いことを抑圧して意識の底に閉じこめ、自分という人格が揺らいだり、壊れたりしないようなしくみになっているのです。
この抑圧と呼ばれる隠し事は人間にとっては欠かせない重要な働きの一つですが、残念ながら副作用があります。
それはふたをして隠した容器の中でウジがわき、やがて容器はおろか容器を含む全体までがそのウジ虫にやられてしまうことです。それは人間なら病気や死を、会社組織なら倒産を意味します。
せっかく出資している会社が倒産したんじゃたまりません。倒産するのは仕方が無いにしても、それならそれでその会社がどうなっているのか、財務状況を知りたいところです。そうでなければ資金は集まりません。公開する義務を負わせ隠せなくなるような歯止めがどうしても必要なのです。
民営であるかどうかには関係なく、公開の義務のない組織なら、その組織もそのうち危なくなるのではないか、と推測できます。
たいていの病院は医療法人が経営する<民営>ですが、日本医師会は株式会社(会社法人)の参入に反対しています。営利を目的とする株式会社になると、儲けが優先になって医療の質が下がる、からだという主張ですが、現状の医療法人でも十分に質が落ち、不祥事が続いているため、この主張には説得力がありません。
株式会社が参入すると、経営状況に加えてカルテの公開などが進んでしまうのではないか、とおそれているのかも知れません。病院の隠蔽体質が進み、診てもらおうと思ったら病院の方が病んでいた、というのでは困るので、自らの病には無頓着な病院の場合は、病院自体の”治療と予防”のために株式会社参入が必要だと思います。
-2003/7/19
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