乗り換えの空港でちょっと休もうと思ったらそこには先客がいました。丸く大きな円周上に並べられたソファーに陣取っていたのは大柄のオバちゃんたちです。彼女たちはちょっとだらしなくくつろぎ、隣の人の肩を叩いては大声で笑っています。
”どこの国のオバちゃんもやることは一緒だ” 私は自分の育った島のオバちゃんたちを懐かしく思い出しながら、隅のソファーでまったりとしていました。その空間で、私は見知らぬ国のオバちゃんたちと心情的には一体化していた、と言ってもいいでしょう。
そこへ明らかに質の異なる、自信に満ちた上品な笑い声が聞こえてきました。しかも、その笑い声には日本語が混じっています。声のする方をみたらJALの乗務員たちでした。当時はまだフライトのスケジュールもきつくなく、おそらく今夜はパリで一泊し次のフライトに備える、という感じだったのでしょう。
その華やかな一行を見送りながら、”JAL(日本)はすごい”と、ソファーでくつろいでいたアフリカ人らしいオバちゃんたちと一体化していた私は、自分が日本人であることを忘れて、そう感じていました。しかしこのようにい輝いている姿を目撃したのは今から20年以上前です。
その後JALはJASと統合し最近聞こえてくるのは「リストラ」とか「危ない」とかいう話ばかりです。しかも今年は再建四ヵ年計画の一年目。6月5日には1000億から2000億円の優先株を追加発行する予定であることが明らかになりました。つまり、あたらしく株を発行して資金を集め、その資金を使って燃料費の安い新型航空機を購入し、経費を抑えて利益を確保しようという計画のようです。
発行した株は銀行に引き受けてもらおうとしていますが、銀行の方は条件として追加リストラを要求しているようです。この追加リストラの話を聞いて、ちょっと寒気がしました。というのは、取引先をどんどんダメにしてゆく銀行的なやり方、を連想したからです。経費を下げれば利益が増える、という単純な算数の計算以外には何も感じられませんでした。
その二日後の6月7日には日航の筆頭株主が米大手銀行になった、というニュースが流れました。「ステートストリートバンクアンドトラスト」とかいう名前の米大手銀行が、東急に代わって筆頭株主(2007年3月期)になったらしいのです。筆頭株主といっても株保有比率は3.2パーセントだそうですが・・・。
外資が目立ってきたといことは、日航株は底だという見方が出てきたということでしょうか?
統合してリストラを進めると、社内にはリストラされまいと生存本能が優先して、安全よりは足の引っ張り合いになるのが常です。希望退職を募れば、まず会社に愛着を感じている人たちが「自分がやめることが会社の役に立つのなら」と辞めてゆき、一段落した後は、会社への忠誠心はおろか、愛着も未練も消え失せた社員たちが、ライバル企業に転職したりします。
”日航がそんなリストラの最中だとすると、飛行機の安全どころじゃないだろうな”、と見る人も多いように思います。主力銀行のさらなるリストラ要求は、このようなアナウンス効果があるように思います。
ボールビィの愛着理論を広い意味で解釈すると、会社への愛着を取り戻すためには、会社と共に社員が成長するか、あるいは会社が無理ならその象徴的ななにかと共に成長するか、が必要になると考えられます。
しかし、この種の取り組みを日本の銀行が支援するような気がしません。結局日航の再建も、外資だのみになってゆくのでしょうか?
-2007/6/9
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