中学生によるホームレス暴行事件の原因が図書館で注意されたせいだと知って、いろいろ考えさせられました。それでもこのニュースを知った自分にとってこの事件は数限りなく存在する痛ましいニュースの中の一つに過ぎず、時が経てば他のニュースに心を奪われ、あるいはそれより大事な日常的なあれこれに多くのエネルギーを費やして日々が過ぎ去り、時間の経過と共にその記憶が薄れてゆきます。ところが、事件に直接関わった人達にとってはそうもいきません。
加害者の家族もそうですが、実際にその暴行に加わった中学生達の立場に立って考えてみることにします。その中学生達が反省しているという報道を耳にしました。反省していることを口にすることは、自分に加えられる社会的な制裁を少しばかり軽くすることには役立つかも知れませんが、自分自身がこれから迎える闘いにおいてはあまり役に立たないような気がします。
いくら反省しても、やってしまったことは元には戻らないし、そんなことをしでかした自分とこれから一生つきあっていかなければいけないのは自分自身です。それを苦しいと感じるのは人間が罪悪感というものを持っているせいだと思います。この罪悪感さえなければ、いくら失敗して人に迷惑をかけてもそれなりに明るく生きてゆけるのかも知れません。
人に迷惑をかけたことを罪だと感じ取る能力とも言える罪悪感は、その意味を突き詰めたときに、自分の存在意義を否定することになるから辛いのだろうと思います。そこから導き出される結論は「自分は生きていても何の役にも立たない価値のない人間だ」という考えたくもない基本的な問いに答えが出てしまったような気がするからです。
しかし、それを認めようとしないのが生物学的な意志とも言える本能なのだろうと思います。そこで、そんな本能と、結論を導き出した自分との間にある潜在意識がぶつかり合い、これまでに蓄えてきた経験や環境から、解決策を探し出そうとして働き続け、ある考え方が生まれるのだろうと思います。
最初は「自分も悪いが世間も悪い」というものです。この考え方は罪悪感に苦しめられているときにはその苦しみから自分を解放するという意味において即効性のある考え方と言えます。しかし、この考え方の欠点は長続きしないことです。「こんなことではいけない」という向上心という怪物に襲われて、その怪物との闘いを余儀なくされます。この闘いにたとえ勝って、自分はこれでいいんだという結論に達したとしても、晴れ晴れとした気分になれるとは思えません。
そこで「普通の人を目指そう」という結論に達します。人並みであると言うことは、人から注意されてかっと頭に血が上ったときでも、クールさを装うことです。ところが、そうしたい自分とそれでは納得できない自分との間の落差がストレスとなって自分を襲います。そしてそのストレス解消の方法を考えることになります。ストレス解消が”仕返し”に向かえば大事件につながることを知った以上、それ以外の方法、つまり普通の人達がやっている、解決とは直接つながらない、買い物や食事や歌やゲームに興じることになります。そして、なんとか人並みに近づいても、犯してしまった罪の重さに比べれば、まだバランスがとれません。
そして最後は、「人並みを越えた善人を目指そう」という結論に達します。犯した罪と正反対のことをすることによってバランスを取り、気持ちの安定を求めようとする考え方です。これは世間的には悪人が善人となって改心したように映ります。しかし、おそらくこれは本人にとっては、善人になることが目的ではなく、自分の中でバランスをとるための手段なのだろうと思います。しかし、これはかなり厳しい世界です。欲を出さずに普通の人を目指すくらいのところで手を打つのが良いのかも知れません。それだって、結構大変です。
集団で悪さをしてしまうのは一人であれば、自分の行動に疑問を持って抑止力になるのに、へたに賛同者がいるために「これでいいのだろう」と考えてしまうからだろうと思います。どんなに間違ったことをする王様も2,3人の自分を持ち上げてくれる家来がいれば幸せなのだという話を聞いたことがあります。今の自分に家来はいなくても、少数の仲間で構成する”狭い世間の常識”が、世間や社会の常識だと錯覚してしまうことはありそうです。”狭い世間の常識”という罠に明日にもはまってしまう人がまたでてくるのかも知れません。それが自分ではないことを祈りたいと思います。
-2002/1/29
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