中国人の理想は”ルールを越えたVIP待遇を受けられるような人になること”であるようです。このためには富と徳を得ると同時に、そのことを世に示さなければなりません。相手に自分のそういうイメージを植え付けることによって、相手の態度が変わり、コネが生まれて、特別の扱いを受けられるという考え方です。
富を得ることによって幸せが得られるという考え方は功利主義とも呼ばれ、近代の欧米や日本にも多い合理主義です。中国本土の共産主義は合理的な考え方を進めてゆく上での手段だったのでしょうか?ここで日本と違うところは金持ちになるだけでは不十分で、自分が金持ちであることを示す必要がある(対面)ということです。従って、高価な服を身につけるだけではたいした意味はなく、高価な服を身につけていることがすぐに分かるようなブランド品を身につけることが重要になります。
つきあう相手がどんどん変わってしまう場合は富を得ることが重要ですが、人間関係が長く続く場合は、道徳的な対面も重要になるといいます。ここも対面なので、徳の高い人間になるだけではだめで、自分がそういう人間であるというイメージを嫌みにならないように相手に植え付ける技術が必要で、そのための戦術を中国人は身につけてきたと言います。
道徳的にも徳の高い人を目指すのは、もちろん孔子以来の儒教思想の影響です。
さて、これらをふまえた上で最近の事情に当てはめてみたいと思います。
教科書問題
日本のマスコミが”日本の教科書にはこんなことが書いてある。これじゃ、中国や韓国が黙っていないだろう”と報道した場合、中国は黙っているわけにはいかなくなります。過去の日本の過ちを正すことは道徳的体面上必要になるからです。
しかし、中国が日本との関係を良好に保ちたいと考えているとすれば、日本の立場も考える(日本の道徳的対面を尊重する)ことが重要だということは十分に分かっているため、自ら進んで余計なことは言わないという戦術を持っているはずです。
中国が日本に対してまるで、親か兄弟のように”意見”するのは、意見せざるを得ないような状況に日本のマスコミ自体が中国を追い込んでいるようにも思えます。
不審船事件
不審船引き上げに祭し、中国は引き上げ作業によって失われる漁獲を保障するように日本に要求しています。これは合理的な判断で当然とも言えます。次は道徳面です。この面でも中国という国は”徳の高い国”であるというイメージを国際的に示すために、その言動は慎重です。
さらに複雑にしているのは中国にとっては戦友でもある北朝鮮との関係です。
日本が中国の戦略と相容れない態度をとると、日中関係はもめることになります。
国際援助
よりお金を持っている人はそれを示すために、贈物をするそうです。これが社内なら上司から部下への贈物となり、日本とはだいぶ事情が異なります。
これを国と国との関係に当てはめると、よりお金持ちである日本からODAをもらうのは当然で、さらに中国がより貧しい国に援助をするのも当然だということになります。
友好国
中国人は相手が信頼に値するかどうかを知ろうとするため、友人になるには時間がかかるそうです。友人を選ぶ際に重要な手がかりは孔子の教えでもある『言動の一致』と、相手がどんな友人とつきあっているかを知ることだそうです。
-2002/6/29
■参考文献・資料
- 放送大学講義 社会心理学−アジア的視点から−
第12回 中国人の社会的行動(2)
担当講師:クウォク・レウン(香港中華大学教授)山口 勧(東京大学教授)
- 論語
狩野直禎(かの・なおさだ)作。株式会社ナツメ社。図解雑学シリーズ
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