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「雲の如く水の如く」という考え方

 夏目漱石の草枕の冒頭には、「山路を登りながら、こう考えた。智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。・・・」とあります。これをもうすこし噛み砕いて言うと、次のようになると思います。

 「理想を言ってみても人とぶつかるばかりだ。でもだからと言って、感じるままに生きていると堕落してしまう。自分の信じることを貫こうとすると逆に自分を追い込んでしまう。とにかく世のなかというのは住みにくい」。

 しかしこれは世の中がどうの、という以前に、自分自身のなかですでに衝突があります。「毎日少しずつ宿題をやろうと心に誓ったのに、それでは休みらしさが味わえない、などともう一人の自分に反対される。そのだるい誘惑に負けたままやり過ごすと、宿題はちっとも進まない」と言った具合です。

 一度うまくゆかなくなると、もうダメかと、完璧を目指せばなおさらそう考えます。そんな完璧主義者の人には、雲水(うんすい)という禅僧の考え方がよく似合うように思います。

 「雲はまっすく進もうとするがその先に山がそびえ立っている。そこで雲はわが身を裂いて山の稜線をなめるように進む。山を過ぎれば何事もなかったかのように元の雲に戻って先へ進む。水もまた川を流れて進むとき石や岩に行く手を邪魔されぶつかるが、わが身をくねらせてそのわきを流れ、何事も無かったかのようにさらにその先へ進む」。

 自らの意思を貫こうとして人とぶつかったとき、人の考え方を変えるのはまず無理なので、自分が折れてその場をやり過ごすわけです。しかし自分は進む方向を変えたわけじゃない、ただ雲の如く水の如く、わが身をくねらせているだけ、です。

 このしなやかな「雲水」という考え方の最大のメリットは、雲や水を見たり思い浮かべるだけで、その考え方をいつでも思い出せることです。

-2006/8/29


   
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