ケーキを何人かで分けるときには、ケーキを切る人と選ぶ人は別の人が良いと言われています。生命維持のための食料を少しでも多く確保したいという人類共通の悲しい性(さが)のためか、切った人が選ぶと 自分の分を大きくしてしまい、不公平になってしまう可能性があるからです。そこで、別の人が選べば、限りなく等しく分けることがみずからの利益を最大にする方法(一番損をしない方法)、となり公平になるというわけです。
この話は政治学者のロールズ(1921-2002)の著書『正義論(A Theory of Justice)』のなかに出てくるのだそうです。問題の英文は、
if I don't know which piece of cake I am going to get in the end, it
makes sense for me to cut the cake fairly.(結局ケーキのどちらが自分のものになるか分からないのなら、ケーキは公平に切り分けておいた方が良い。)
のようです。ケーキを切り分けた人が自分の取り分を自分で選んだ場合、実際大きい方を取ったかどうかには関係なく、狡(ずる)くて汚い、と非難されそうです。それでも世の中には、勝手に切り分け勝手に自分の口に運び、シメシメと思うまもなく気がつけば牢屋にぶち込まれている、という人が少なからずいるようです。そんなつまらないことで、一生を棒に振ってしまわないよう、なんとかしたいところです。
最近では、主なケーキの受取人となる私人が、切り分け役となる公人を兼ねることよって生じる利害の衝突、conflict of interest(12月9日現在で144万件)、が問題にされています。
以下にこの利害衝突の、指摘されている例を拾ってみました。
泥棒が裁判官を兼任する
私人として泥棒を業として営む者が公人として裁判官を務めるケースです。泥棒が手に入れるのは公平な判決ではなく自分に有利な判決です。
殺人犯が刑事を兼務する
警察関係者が殺人犯である場合、わざと逮捕しないこと(職務怠慢)が考えられます。
会社の経営者が大臣を務める
一企業に過ぎない自分の会社に政策的に予算を回してしまうことが考えられます。会社の経営者が議員でもある場合、住民より業者を優先し、たとえば必要なところには道路をつくらず、不要なところに立派な道路をつくって仕事を確保していた、という話は良く聞きます。
公人は税金というケーキの切り分け役で、本来は納税者に公平に配分すべきところですが、自分で切り分けたものを自分で受け取ろうとしているからもめることになります。
役人が特殊法人をつくりそこへ天下りする
税金を使って特殊法人をつくり、そこに天下り(再就職)する人がいるとすれば、これもケーキを自分で切り分け、自分が受けとっていると言えます。
利害衝突という考え方は、公平であるかどうかを見えやすくするためのツールであると言えそうです。このツールを使い慣れるに従い、公人がやっていることが今よりもずっとよく見えるようになってくるはずです。
-2003/12/7
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