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数字の階段

 

 「自分はだいたい百円くらいのところに居て、左には千円へと昇る階段があり、右には十円へと降りる階段がある。左を見ると一万円と一億円あたりに大きな踊り場がある。最近一兆円のあたりにも踊り場ができた」。人によって違いはあるようですが、これが自分の数字のイメージ、つまり「数字の階段」です。

 この階段はいつの間にか意識されるようになっていました。一円の小さな踊り場には一円の飴玉が置いてあり、十円のところには十円の駄菓子が置いてあり、そしてさらに、握り締めた手には百円玉があります。つまり、階段やその近くにはその数字(値段)の商品が置いてあるというわけです。

 百円ショップの商品は目線にあるためとても心安く感じます。調理パンやハンバーガーも、目線にあるため価格の動きには敏感です。百円を大きく超える調理パンには手が届かず、ただ割引を待つのみです。十万円くらいのところにはテレビが置いてあるため、それより高い液晶テレビには手が届きません。無理に買おうとすれば、かなりの背伸びが必要です。

 数字の階段がイメージされるのは物の値段だけではありません。たとえば人間の細胞が60兆ある、という話を聞けば、60兆目のあたりの段に「細胞人間」を置くわけです。地球の人口が63億だと聞けば、さっそく63億段目あたりに、人で溢れる地球のイメージを置きます。

 ところがここに大きな問題が起こりました。いつまでも百(百円)のところに目線があると、大きな数字が霞んでしまうことです。たとえば一戸建て住宅やマンションの、一千万円を超える数字は霞んでしまうため、高いのか安いのか、損なのか得なのか、が最初はピンと来なかったりします。

 となると、人口の多い大きな国では、一人の人間の価値もまた遥かかなたに霞んで見えるのではないのか、だから、たとえばロシアのように、国境を超えて侵入した人を比較的安易に殺してしまうのではないか、などと考えたりします。

 現実の階段の昇り降りが大変なように、「数字の階段」の昇り降りも大変です。

2006/8/19



   
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