最近、変わる必要があると言われることは無いでしょうか?『変わらなければ生きてはゆけない。』と。しかし、これは『はい、そうですね。』と服を着替えるようなわけにはいきません。変わる必要があると人前で主張する人でさえ、変わることは難しいと考えているのです。そして変わることはどうしても必要だと言いながら、どうしたら変われるのか、その秘訣までは教えてくれません。それは常に自分への宿題として残ります。
変わるとは行動が変わるということでしょう。行動が変われば見ただけで分かるし、結果も変わります。行動を変えるためには考え方を変える必要があるということを考えると、変わることが難しいのは考え方を変えることが難しいからということになります。それならなぜ考え方を変えることは難しいのでしょうか?
いつの間にか身についてしまった、人それぞれの行動原理。行動原理は自己防衛のためのメカニズムだと考えています。
外出するという日常的行動を考えただけでも、その行動に移るまでの思考過程にはそうしたい多くの理由とそうしたくない多くの理由がぶつかり合い、その要素のあまりの多さ故に、多くは意識される前に結論に達し、結果として意識される結論は比較的平凡な形でやってきます。それは『何となく外に出たい。』、あるいは『何となくやめとこう。』理由もなしにその日の行動を決めてしまうことが嫌いな人は理由を後から考えるでしょう。「買い物があるから外に出よう。」、「部屋の片づけがあるから外出は控えよう。」
外出するという結論が先に出ている場合でも、人によってはその理由を必要とする人もいれば、気の向くまま動こうとする人もいます。前者は”几帳面”、後者は”きまま”と呼べるかも知れません。しかし、結論は同じだったりするところが面白いところです。
変わりたいと思っているはずの自分が変われないとすれば、それは変えたくないと考えている自分が隠れていて、姿を現さないのに自分を支配しているせいだと考えることができます。その姿を現さない自分の本音の部分はこれまでの経験から総合的に判断して行動を決めてくれる味方であるはずです。
ところが世の中の動きが激しすぎるとその味方はその動きに合わせて機敏に自分を導くことが出来ず、いよいよ危険が迫ったときには間に合わないという事もあります。自分はしっかり変化を意識しているつもりでも、結局行動できない自分を無理に動かそうとするから変わることが難しいのでしょう。個人の行動原理を支えている思考過程を変えるためには最も原始的な生活における思考にまで遡る方が容易では無いかという気がします。
築き上げられた文明は、それを作り上げた人達の知恵を受け継がずに利用するとき、求められる変化がその文明さえも奪ってしまうのではという恐怖を植え付けるのかも知れません。
それなら、その文明を一端否定して、そんな文明の存在しなかった原始時代で生きてゆく方法を思考することが役に立つかも知れません。これは思考の根本にまで戻ってそこからスタートするショック療法的思考の変革と言えます。
無人島に一人で暮らすことを考えてみましょう。昼間にその島に流れ着いた場合、貴方なら、何から始めるでしょうか?たとえ腹が減っていても、編者ならまずその日に眠る場所を探します。どんな時代でも安らかな眠りは力の源です。岸壁に穴が有ればそこが良さそうです。ところがどこにもそんな大きな岩がないのなら、草木を使って家を作ることを考えます。草や木を切る道具を作るために、石と石をぶつけて割り、鋭い断面を利用して道具を作ります。初めから立派な道具を作ることは無理なので、家も立派な物は作れません。それでも、夜露をしのぐ場所が確保できれば大成功です。
次は食料を手に入れることにします。釣り竿も網も無いのにどうやって魚を捕れば良いのでしょうか?潮の満ち引きを利用するのも手かも知れません。潮が満ちたときに小さな入り江に入り込んだ魚を逃がさないように出口に石を積んで潮が引くまで待ちます。潮が引けば海水がなくなり魚が飛び跳ねるようになり、捕まえることができます。
潮が引くのを待っている間に魚をさばく包丁の代わりになる石器を作ることにします。石を割ってその石器が出来たら次は火の準備です。生で食べるより、焼いた方が美味しいからです。土器はどうしても必要です。一つは海水を煮て食塩という調味料を手に入れるためです。食べ物が手に入ればこれもまた大成功です。
毎日のように睡眠欲と食欲という本能を満たすことに明け暮れ、そのなかで充実感を得る日々が続きます。そしてついに温泉を発見し、その心地よい至福の世界を手に入れることになります。
原始時代に戻ることは出来ませんが、その時代の暮らしぶりに思いをめぐらせることは可能で、それが原始的で有ればあるほど、根本的な部分から現在に至るまでの知恵の蓄積をなぞることにもなります。それは、どこまで自分は戻ってやり直せばよいのかを教えてくれるかも知れません。そしてそれは、結果として変わることを容易にしてくれるのでは無いかと考えています。
-2001/12/29
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