牛や馬には悩みがないということを前提にしたタイトルをつけてしまいましたが、もしかしたら彼らも悩みを抱えることがあるのかも知れません。しかしここでは彼らは悩むことはない、という前提で話を進めることにします。
”なぜ牛馬には悩みがないのに、人間には悩みがあるのか?” この問についてはその昔何度か考えたことがありますが、納得できる解答は得られませんでした。ところが最近になって、人間は時間的存在である、という話を聞いて、牛馬と人間との違いもここにあるのではないか、という気がしました。
時間的存在、つまり、過去や未来のことを思い描くことがなければ生きてゆけないのが人間という生き物なのだそうで、たとえば、牛や馬は自分の過去の過ちについて悔やむことはありません。「コンチクショー!」と石を蹴る牛も見かけなかったし、将来のために計画を立てる馬を見たこともありません。
過去を振り返ったり未来を予測してみたり、存在し得ない過去や未来について思いを巡らすことができる、という能力が人間に備わってしまったために、『悩み』と称する副作用を味わっているに違いないのです。
となれば、過去や未来を遮断すれば、そこから押し寄せてくる悔いや不安にブレーキをかけることができるはずです。問題はどうやって過去や未来を遮断するのか、という点です。
この点についてもっとも効果的な方法は、この世があと一週間で消えて無くなるとしたら、残りの一週間で自分は何をするか、と自問することだと思います。何をすべきか、ということより、何をしたいのか、ということをよく考えるのです。
この思考実験には一円の費用もかからない、という点も見逃せません。一週間後を境に、過去と未来を遮断することができます。一週間が長すぎるというのなら一日に、カスタマイズすることも自在です。
この思考実験の長所は、コストパフォーマンスやカスタマイズの自在さだけではありません。横道にそれがちな我が身の行き先を、速やかに軌道修正できます。しかもこの時間的思考実験は、悩みがない牛や馬には真似ができません。
-2004/1/13
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