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喪失体験と闘う方法


 佐世保の殺害事件で亡くなった女児の父親は、突然空気のような存在を失い混乱している、と話していました。三年前に奥さんを病気で亡くしているため、短い期間に大事な家族を二人失ったことになります。混乱するのも当然です。

 喪失体験をすると、現実を認めたく無いことからまず否認があり、次に現実を認めざるを得なくなり悲しみがあり、そして時間をかけて徐々に回復へと向かう、とされています。容認しがたい現実でも、受け入れて素直に悲しんだ方が、回復は早いとも言われています。

 回復に必要な要素には時間が含まれることは確かですが、その人が生きていたことや死そのものに、意味を感じ取ることもまた、一つの重要な要素だという気がします。だから、死はけっして『無駄死に』であってはなりません。

 なぜ殺害されたのか原因を徹底的に調べ、少しでも同じような事件が起こらないようにと被害者の家族が願うのは当然ですが、ニュースで事件を知った人たちのためにも事件の分析は必要だという気がします。

 このようなニュースが流れると、ネットで加害者の個人情報らしきものが流れたりしますが、こうした動きのもともとの動機は、このままではいけない、という不安によるもので、ただやり方を知らずに悪のりしている、ということだと思います。

 原因の分析が進めば、悪のりする理由も無くなるはずです。

 しかし、人の死の原因が事件や事故であれ病気であれ、我々は喪失体験から逃れることはできません。そして喪失体験を繰り返すたびに勢いを失ってしまうのも事実です。これは、不快な喪失体験という刺激を受けているのに、そこから逃れるすべがない、という体験を繰り返すことで、無駄な抵抗をしないことを学習してしまうためだろう、と思います。

 しかし、人生には無駄な抵抗がどうしても必要です。我々の勢いを奪い去ってしまいかねないこの喪失体験とどう闘えば良いのでしょうか?

 それは、一寸先は闇、の意味を噛みしめることだと思います。自分自身はもちろん、すぐ隣に居る人もまた、いずれこの世から去りゆく運命にあります。そのときがいつなのか誰も知りません。

 もし自分の命が後一日しかないとしたら、どうするでしょうか?少なくとも、ネット上に加害者の写真をアップしている場合ではない、ことは確かです。

-2004/6/3




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