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お茶とキュウリとトマトの話


 背中で蝉時雨(せみしぐれ)を聞きながら頂くお茶。茶室は狭いがそこで語られる「侘び寂(わびさび)」の世界は広い。茶室でお茶を頂くのは喉(のど)を潤(うるお)すためでもなく、たまに着る着物を見せびらかすためでもなく、好物のお茶菓子を食べ過ぎて太るためでもないらしい。

 玉のように転がる飼い猫の毛の間に棲(す)むノミを取っては、また別の家の猫のノミを取って暮らしていた人が昔は居たらしい。それで暮らしが成り立つのだから豊かな社会だと言える。

  せわしげに働いても働いても気苦労ばかりの暮らしはお金があっても豊かだとは言い難い。おまけに疲れて帰ってきて、挨拶もろくにしないような家庭では何を目指して生きているのか解らなくなる。

 ちっとも気が利かない相手に、良かれと思って文句を言ってしまうと、良くなるどころか喧嘩(けんか)の種になる。それは子供でも親でも世界中で一番好きだった相手でも同じであるに違いない。とくに分かっていながら同じ失敗を何度も繰り返えす自分のことはほとほと嫌になるときがよくある。

 こうあるべきだと考えるのは人間の勝手な考え方で、それはきゅうりをトマトのように赤く育てようと無理をしているようにも思える。涙ぐましい努力にもかかわらず、それが実らず落ち込むときもある。きゅうりはきゅうりとして育てて味わった方がよっぽど手っ取り早くて美味しい。

 きゅうりをきゅうりとして味わうから騒ぐことなく静かに美味しく暮らせるのが「侘び寂」的なのかもしれない。

-2001/7/30



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