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普通の格好をした、普通じゃない人々


 最近店の売り上げが落ち込み、どうしたものかと思案していたレストランの主人のところへ、グルメ雑誌の覆面審査員が自分の店にやってくるというニュースが入ります。

 そしてその当日、店にやってきたある紳士を審査員だと思いこんだ店の主人は、その紳士へのサービスに励みますが、隣の客がうるさくて仕方がありません。あんまりうるさいので、「出てゆけ!」、と怒鳴ってしまいました。

 ところが、覆面審査員は怒鳴ってしまった普通の客の方だったのです。これは『ザ・シェフ』の一場面ですが、このように、ただ者じゃない人が普通の格好をしてさりげなく登場する話はよく聞くところです。

 現実の世界でも、権威あるさまざまなメディアや作品の多くは普通の格好をした才能ある人たちによって作られているのだろうと思います。


 二つめの話は個人的な経験です。ある駅のホームで電車を待っていたとき、見覚えのある人が立っていることに気がつきました。その人はさっきまで自分が受けていたセミナーの講師でした。

 この人は、今なら知らない人はいない、某ゲームメーカーのえらい人で、セミナーではいろいろとおもしろい話が聞けました。

 セミナーを受けた人なら、この人がただ者じゃないことは理解できると思いますが、そうではない人たちには普通のオジさんに見えるはずです。


 三つめの話はラジオで聞いた話です。ある人が最終の新幹線に乗って自宅に帰ろうとしていたとき、隣に若い女の人が座っていたそうです。お互いに知らない間柄です。

 ところがその女性はずっと泣いていて、考えようによっては自分が泣かせたようにも受け取れます。

 後で分かったのは、彼女が遠距離恋愛中で、彼氏に会いに来たもののあっという間に時は過ぎ去り、駅のホームで別れを告げ、最終の新幹線で帰る途中だったらしいということでした。

 実際そういう人たちは少なからずいるらしく、最終の新幹線が混んでいるのはそのためらしいというのです。それからしばらくして、”シンデレラ・エクスプレス”の広告が流れることになりました。

 自分の横にたまたま座っていたおじさんが、JR東海にシンデレラ・エクスプレスの企画が持ち込まれたとき、GOサインを出せる立場にあった人だったなんて、もちろん知るはずもありません。

 普通じゃない人たちというのは、我々のすぐそばにいて、そこに漂う空気を吸い込みながら、この世の中を動かしているのかも知れません。

-2003/1/25


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