「よろしくお願いします。」などと電話の向こうの人に言いながら、見えない相手に下げなくても良い頭を下げる人がいます。横で見ていると、目の前の机に頭をぶつけるのではないか、と心配になるくらいです。どうしてこんな癖が身に付いてしまったのでしょうか?
電話を切った後、「ふ〜〜」と毎回一息ついているところをみると、電話の間中緊張していることが伺えます。電話で話すことが危機であるかのようです。見えない相手と話すことを恐れているかのようです。電話を切ると同時に危機は去り、緊張が緩和され安堵感が広がります。
幼児や赤ん坊には指しゃぶりが見られますが、この指しゃぶりは不安を和らげるためで、不安の根本原因が無くなれば指しゃぶりも必要なくなる、とされています。小さな赤ん坊が不安の原因を取り除けるはずがありません。
取り除ける人がいるとしたら、それは大人ということになりますが、指しゃぶりを目撃した大人が不安の原因を取り除くことなしに指しゃぶりという行為だけを止めさせようとすると、赤ん坊の不安は増大し、ご機嫌を損ねることになります。そして赤ん坊は泣きじゃくり大人は赤ん坊の逆襲を受けることになります。
指しゃぶりに限らず多くの癖が無意識のうちになされるように、電話をしながら頭を下げる行為も、まるで反応のように意識することなく行われているようです。おそらく最初は何らかの原因があったのでしょうが、もはやその原因が存在しない今となっても、癖だけは遺産のように残っているのです。
一人一人の癖がどのような経過を経て定着したのかを知る事はむずかしくそれ故に謎でもありますが、ただそうやって精神を安定させ人格をゆがめることなく危機を乗り越えてきた、とその癖が教えてくれていることは確かなようです。
-2004/12/15
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