そこは白っぽい店のなかで、その店の主人らしい人が盛んに不思議な液体の威力について力説していた。その液体にはすごい力があるらしいのだが、実際その液体で何ができるのかについてははっきりしなかった。それでもかなりそそられる話だった。
店主は透き通った容器を右の棚あたりから取り出し、目の前の白い台の上に置いた。その容器はガラス製のようで、取っ手の無い透き通った鍋のようでもあった。容器には大きくて半透明な星のマークが蓋のところに入っていた。店主がその容器を傾けると、中の液体が傾けた方向に移動したりして、容器の中にはたしかにその液体が入っていることが分かり、皆を興奮させた。
それから店主は蓋を開けてコップ一杯分くらいの液体を台の上にこぼした。見ると不思議な妖気を漂わせながら蒸発し、消えてゆくではないか。目の前で見ていた私は思わずその液体がこぼれた台の上に手をやり、その液体で両手を濡らした。それでも足りずに、身を乗り出して腕全体がその液体の蒸気に包まれるようにして液体の不思議な力に身を任せたのだ。
その甲斐あってか、私の体は次第に黄色と茶色の花粉のようなもので覆われ始めた。実に恐るべき変容振りだった。私は誇らしげにその異様な格好で外に出て、大きな通りの緩やかな坂を上がり始めた。
すると私の後ろには、私が不思議な液体に触れたことを知った人々が大勢続いた。私自身は坂道を上りながらも、どこへゆこうとしているのか知らないのに、そんな私の後ろについてくる人がいた。しかし時間が経つにつれ花粉のような異物は姿を消し、次第に元の姿に戻っていった。
それから場面はいきなり自分の部屋に移り、時計を見たら朝の七時だった。つまり、不思議な液体の話は夢だったのだ。夢の中で液体が登場する場合、これまでの経験では、それは例外なくトイレで目が覚めたときだ。見事なくらいに刺激が夢に反映されることが多い。
たまたま話がつながる夢を見たときでも、その夢は一瞬の刺激によって作られるものらしい。起きる角度が少しでも違っていたら、不思議でも何でもない液体の話になっていたに違いない。
-2004/3/10 初版
-2005/1/15 推敲
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