気がつけばまるで壊れたテープレコーダーのように、繰り返し繰り返し頭の中でぐるぐる回る鼻歌。その鼻歌はしばしば隣の人から伝染します。どうしてまるでインフルエンザのように、あるいはコンピューターウィルスのように伝染してしまうのでしょうか?
もしかしたら人の記憶の特異なしくみがそうさせているのかも知れません。どこどこに何が書いてあると覚えるのではなく、あるいはこれこれしかじかの住所にその記憶が置いてあるという覚え方でもなく、まるでインターネットのホームページのように、関連することがらがリンクしていて、そのリンクをたどりながら芋づる式に思い出しているようなのです。
その証拠に、この特徴を活かした記憶法も存在します。だれでも工夫次第で物覚えをよくすることが可能です。有名なのが関連づけという方法です。たとえば、はさみと三角定規と消しゴムと目覚まし時計・・・、と続けて頭に入れ、しばらくしてから一つ一つを思いだそうとしてもなかなか思い出せませんが、関連づけると飛躍的に物覚えが良くなります。
たとえば日常良く目にする風景と関連づけてみるわけです。ハサミが階段のところに落ちている場面をイメージし、次に玄関のドアに三角定規がかかっている場面をイメージします。さらにドアを開けた玄関マットの上に消しゴムが落ちていて、さらに台所のテーブルの上に目覚まし時計が置いているという具合です。
しばらくしてから、階段、ドア、玄関マット、テーブルと順番に思い出せば、するするとハサミや三角定規や消しゴム・・・をついでに思い出すことができます。どうも人の記憶は、関連づけてイメージすることで、別々の記憶と記憶がつながるようになり、次から次に思い出すことができるようになるようです。
しかも関連したことはたくさんあって、それはまるで図書館の奥から関連のある本を台車の上に乗せてガラガラ音を立てながら運び大きな机の上に置くような作業を、自動的にやっているかのようです。これは脳の中の関連したことを記憶しているそれぞれの部位が次から次に活性化し、出番を待っている状態だと説明されています。海の底深くに眠っていた記憶が、海面近くまで浮かび上がってきて、すくい上げてもらうのを待っているかのような状態です。
おそらく隣の人の鼻歌を聴けば、きっと後に続くメロディについての記憶を近くにたぐり寄せようと試みるに違いありません。好みの歌手が歌っていたならその歌手についての記憶も活性化し、さらに続けてその曲をよく聞いた頃の、遠いがゆえに甘く熟した記憶を活性化するために、思わずあなたの口から鼻から歌が漏れて出たとしても、何の不思議もありません。
こうなればあなたはもう立派な鼻歌の感染者です。別の隣の人にあなたの鼻歌が伝染してしまうのは時間の問題です。
-2003/12/18
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