人が日常的に必要とする量を遥かにしのいで物を欲しがるとき、その人は物欲に与えられた使命のために動き始めた人、つまり物動人(ぶつどうじん)となります。一人暮らしのために冷蔵庫を一台買う人は物動人ではありません。その人はノーマルな生活人です。物動人なら、一人暮らしなのに、冷蔵庫を5台くらい持っていたりします。凡人には使途不明であるがゆえに物動人は変わり者です。
そんな物動人は、収入が中くらいならコレクションを始めます。部屋の中がコレクションの対象にまつわる物で満たされます。360度、どこを見てもコレクションでいっぱいです。本人はそのなかで至福の時間を過ごします。しかし、物動人はただの身勝手な変わり者ではありません。コレクションの製作者、職人、クリエーターらの強力な支援者でもあります。一般の消費者の百倍も千倍も買ってくれる物動人は、クリエーターたちにとってはまさに千人力なのです。
多くの物動人たちは、自分の物欲に与えられた使命に気がついていないのかもしれません。しかし、物動人の収入が増え見聞が広まるつれ、その使命はわがりやすくなります。コレクションが昂じると、より芸術性の高い物が欲しくなります。芸術性の高いものは、概して製作者の思いやこだわりが強いものが多く、そのこだわりは、人の心にひぞむ満たされない欲求を昇華するための営みです。つまりクリエーターによって、人に災いをもたらす形無き煩悩が人にうるおいをもたらす芸術品へと姿を変えるわけです。だから芸術品は、クリエーターが煩悩との闘いに勝利した証になります。
その勝利に共感できる人がコレクターなのかもしれません。そして集めたコレクションの多くは、物動人の死後、その多くが美術館に寄贈されます。あるいは、また別のコレクターと呼ばれる物動人の手に渡り大切に保管されます。
たとえコレクターの中に大悪党がいたにしても、物動人であることに変わりはありません。自分の子供や孫とその後の世代に、煩悩との闘いに勝利することの快感を伝えることになります。
つまりこういうことになります。@まずクリエーターが煩悩を芸術作品に変える。A次に物動人がその作品を観て物欲と呼ばれる煩悩のとりこになる。Bそして物欲に動かされて作者を支援し、作品を後世に伝える。物欲が煩悩をリサイクルする不思議なからくりです。
-2006/7/21
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