花子さんは自分の部屋の中で銀色に光る石を眺めながら考えていました。
『困ったときに助けてくれるこの石はそして不思議なぼんやりとした影のような馬のようなものはどこから来たのだろう?河原で拾ったということはその上流から流れてきたのかも知れない。』
その川の上流にはばうぼう山という村のどこからでも見える守り神のような山があります。花子さんはいしぼうぼうがそこで生まれたことを知りません。いくら考えてもわからないので考えることをやめて、いつものようにポケットにしまいました。
そしていつからか花子さんは自分を助けてくれる存在を”いしぼうぼう”と呼ぶようになりました。
そんなある日の学校帰り、後ろから走ってきた太郎君がまた今日も花子さんの髪の毛をひっぱっては
「ブス!」
と言いながら走り去っていきました。
『なんて、いやなやつ!太郎君なんか大嫌い!』
いつものことながら花子さんは今日もそう思いました。仕返しをしてやろうと思っても、走り去っていくのでどうにもならず、だからと言って追いかけても疲れそうだし、また髪の毛を引っ張られたのではたまったものではないと思いあきらめていました。
素直じゃない太郎君はいつも花子さんに悪さをしてしまいます。そして捨て台詞(せりふ)を残していつも走り去っていくのですが、その日はちょっと違っていました。
十メートルくらい先まで走った後、太郎君が見事に転んだのです。転ぶような石も落ちてはいないし、しかも転びかたが面白いのです。まるで柔道の受身のように怪我をしないように力を抜いたように転びます。ただ、太郎君からするとどう考えても格好がつきません。花子さんはその姿を見て笑いながら太郎君にこう言いました。
「いたずらばっかりするからそんなことになるのよ!」
花子さんはかなりすっきりしていることに気がつきました。それに転んで怪我をしたわけでもないので気を使う必要もありません。しかしこりない太郎君は次の日もまた花子さんの髪の毛を引っ張っては走り去ろうとしました。そしてまた転んだのです。相変わらず見事な転びかたです。三度目に太郎君が転んだときは花子さんはその様子を良く見ていました。
”いしぼうぼう”が前足で太郎君の足を引っ掛けた後、怪我をしないように太郎君の体全体を包んでいました。だから太郎君は怪我をしなかったのです。それに気がついた花子さんは太郎君にこう言いました。
「人前ではやらないことね。転ぶとかっこ悪いから。」
太郎君はどうしても転んでしまう自分が不思議で、くやしいけど花子さんの言うことは本当かもしれないと思いました。もうやめようと一度は決意する太郎君も、次の日になるとまた髪の毛を引っ張っては転ぶのです。ただ、前よりははるかに弱く引っ張るようになりました。
いしぼうぼうはいじめっ子をコメディアンに変えたのかも知れません。
-2000/12/29
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